松本歯科大学・樋口教授に聞く-歯の健康と体への影響

歯の欠損が大きな問題

歯の本数が生まれつき足りない、歯並びはがたがた-など、記者は以前から、口の中がコンプレックスだらけ。肩が凝るのもかみ合わせが悪いからかも…。そんな不安を抱えつつ、歯のかみ合わせや歯の欠損が、体にどういう影響を及ぼすかなどを聞くために、松本歯科大学(塩尻市広丘郷原)歯科補綴(ほてつ)学講座の樋口大輔教授(53)を訪ねた。
「歯のかみ合わせが悪いから、肩凝りが起こるわけではありません。1つの原因としてかみ合わせがある-程度に考えたらいいと思います」と樋口教授。
かみ合わせ以上に問題なのは歯の欠損。かみ合わせが悪くなる大きな原因であり、そしゃく力(かむ力)が落ちる、発音しにくい、相手が聞きづらい、さらに、顔つきも変化してくるというから、怖い。
奥歯の第一大臼歯がないだけで、そしゃく力が5割も落ちるというデータがあると聞き、「たった1本で!」と驚いた。そしゃく力が落ちると、どうなるのか-。まず食べ物を粉砕できないと、胃腸に負担が掛かり、しっかり消化することができない。さらに、栄養が取れないと、体力が落ちて、フレイル(虚弱)状態になることが大きな問題という。
「栄養状態が悪いと、高齢者は要介護状態になりやすい。虫歯を治すだけでなく、口の中の環境を整え、高齢者を要介護状態にしないことが歯科医の目標」と力を込める。
栄養が取れないと、体重が落ちてしまい、要介護状態、認知症になることも多い。さらに口の中が汚れたままだと、誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こし、死亡する場合もあるという。健やかに過ごすためには、口の中の健康がいかに大切なのかがよく分かった。
このほか、歯の欠損を放置すると、食事ができないことや、かみ合わせが気になることがストレスの原因となる。さらに、このストレスによって絶えず歯を接触させるようになり、顎の筋肉や関節に負担が掛かり、顎(がく)関節症の症状が出ることもあるという。
歯の欠損の治療は、義歯やブリッジ(固定式の義歯)のほか、インプラントがある。インプラントは健康保険がきかないことが多い。義歯、ブリッジの多くは保険がきくが、使う材料によってきかないこともある。
「入れ歯への抵抗感はないか、どの程度までかめるようにしたいか-などとともに、費用面も考えて治療法を選択してほしい」とアドバイスする。
歯の欠損を伴わない歯並びについては、その人がどの程度気になっているのか、どの程度困っているのかが、治療をするか、しないかの判断基準という。
このように歯並び、歯の欠損に対しては、さまざまな治療法があり、「これがベスト」と、一概には決められない。「悩みがあったら、まずかかりつけの歯科医に相談して」と呼び掛ける。