【小林千寿・碁縁旅人】#6 欧州囲碁選手権戦

子どもたちの参加も増えてきた第51回大会(2007年7月、オーストリア・フィラッハ)で
指導する著者

囲碁留学生の受け入れに発展

第76期本因坊戦七番勝負五局目は21、22日に松本市の松本ホテル花月で打たれ、井山本因坊が勝利、2勝3敗に戻しました。前回の記事に不足がありました。「趙治勲名誉本因坊の40代の10連覇に、井山さんが30代で挑んでいる」という意味合いでした。
さて例年ですと欧州の囲碁ファンは1957年から続く「欧州囲碁選手権戦」が待ち遠しい季節です。毎年、欧州内で持ち回りで、今年は7月24日~8月8日、ウクライナで開催予定でしたがコロナ禍で昨年に続きキャンセルになりました。
開催は欧州の長い夏休みに合わせて2週間。日本社会では不可能なのんびりした大会です。私も、指導者の立場で74年から10回参加しました。
公式戦は1日一局。終局後は、その土地の観光、ハイキング、水泳、夜は太陽が沈むのが遅いので長い夕食を楽しみます。夏のバカンス囲碁大会です。
初期の頃は欧州の顔馴染(なじ)みが集まる小さな大会でしたが、近年は欧米の囲碁人口が増え、また日本からも100人近い参加者があり、世界中から1000人を超える人が訪れる大きな大会になりました。
私は世界で囲碁指導をするたびに聞かれる「どうすれば強くなれますか?」という質問に「小さい時から正しく学べば必ず強くなる」と即答していました。
そして、若く強いプレーヤーが各国で出始めてきた90年のウィーンの欧州選手権戦中に少年たちから「日本で囲碁の勉強をしたい」との相談を受けるようになりました。その秋に日本棋院の千葉・幕張囲碁研究センターが完成予定でタイミングよく、囲碁留学生を受け入れ始めました。
その留学生の中から日本棋院のプロ棋士になった私の弟子はドイツの故ハンス・ピーチ六段(68年生まれ)、フィンランドのアンティ・トルマネン初段(89年生まれ)です。とても貴重な存在だと思います。(日本棋院・棋士六段、松本市出身)