信州・まつもと大歌舞伎 コロナ下元気与えた6日間

祭り囃子(ばやし)が松本の舞台に響き、信州松本松深会(しょうじんかい)の十数人が軽やかに舞った。
まつもと市民芸術館(松本市深志3)で開いていた第7回「信州・まつもと大歌舞伎」が22日、幕を閉じた。「人々がつらい時にこそ元気になるための祭りを」との願いを込めた演目「夏祭浪花鑑(なにわかがみ)」は、十八代目中村勘三郎さんが主役を演じた13年前の初回とは違った演出や清新なキャストで観客を魅了した。
大阪を舞台に義理人情を貫く男と女房の物語。六代目中村勘九郎さんは歌舞伎の様式美を生かしながら魚売りの団七を人間くさく熱演。団七の女房お梶役の二代目七之助さん、団七のせがれ市松を演じた勘九郎さんの次男の長三郎さんに加え、サプライズで長男の勘太郎さんも登場。中村屋と縁の深い松本ならではの演出だった。
尾上松也さんは、団七と義兄弟の契りを交わす一寸徳兵衛とその女房お辰の2役を見事にこなした。笹野高史さん演じる、恩人を売ろうとするしゅうとの義平次を団七が追い掛け、誤って殺害する場面は臨場感にあふれ、見る人を引き付けた。
会場入り口に設けた厄よけの「茅の輪くぐり」や、各公演の幕開けに出てくる神主と出演者による神事の場面は、コロナ禍を受けて疫病退散と公演の無事への願いを込めた。名物「登城行列」は中止となったが、市内の商業店有志などでつくる市民活動委員会は会場の入り口に舞台(山車)を飾り、人力車による観客の送迎で盛り上げた。
千秋楽のカーテンコール。目に涙を浮かべた七之助さんの姿が印象的だった。観劇した早川未知子さん(42、里山辺)は「私たちも役者さんも待っていた舞台だと伝わり、感動しました」と話した。
期間中、延べ約8500人が足を運び、約260人もの市民サポーターが支えた今年の信州・まつもと大歌舞伎。未曽有のコロナ禍の下で敢行され、地域や観客を大いに元気づけた。舞台の持つ力をあらためて感じた6日間だった。