“プロデュース力”松本で

フリープロデューサー 星野亜紀子さん 松本市

色鮮やかなパッケージのご当地コーヒーが並ぶ。テークアウトのコーヒーを手に2階に上がると、そこにはハイセンスなインテリアでまとめられた「憧れの部屋」。ここで味わうコーヒーは格別だ。
今月25日、松本市中央2に開店した「ALPS COFFEE LAB.(アルプス・コーヒー・ラボ)」。フリープロデューサーの星野亜紀子さん(44、桐)がブランディングした。
企業や店、商品などの戦略立案からウェブ制作、撮影まで、多彩な仕事を手掛ける。フリーのプロデューサーは県内では数少ない。
東京都出身。広告代理店で20年近く働き、独立。生き方に悩んだ際、松本で自分に合う仕事に出合った。家族で移住して2年。旅行でしか訪れたことのなかったこの地にしっかり根を張り、奮闘している。

「山雅人」編集長 新商品開発なども

女鳥羽川沿いの古民家を改築し、開店を控えたコーヒースタンドで、星野亜紀子さんが装飾用の花を生けていた。新店舗のウェブサイト開設、販売用コーヒー豆のラベルデザイン、PR用の写真撮影…。各分野のプロを集め、プロジェクトを総括するのが星野さんだ。
同店は、市内でカフェを営む斉藤博久さん(32)の3店舗目。初めて外部にプロデュースを依頼した。「マーケティングや見せ方の手法はこれまで考えてこなかったので新鮮。勉強になった」と斉藤さん。
星野さんは、松本山雅FCの運営会社、食品メーカー、ホテル、行政などとプロデュースの契約をしている。自身の会社名は、英語で魔物や妄想に取りつかれている状態を示す「オブセッション」。企業の課題や気難しいアーティストをまとめる役割だけに「サーカス団の猛獣使い」をイメージして名付けた。
大半を占めるのは山雅の仕事。チーム月刊誌「山雅人」の編集長のほか、農業活性化プロジェクトの新ブランド「あやまる」の商品開発やPRも担う。「地域と共に歩むサッカーチームの仕事にとてもやりがいを感じる」という。

本当の豊かさ考えるように

東京都足立区で町工場を営む家に生まれ育った。広告代理店などを経て独立してからは、星野リゾートが手掛けるホテルなどのウェブサイト制作をコンペで勝ち取るなど、主要ホテルを多く手掛けた。
結婚、出産、離婚を経験。シングルマザーとして仕事と子育てに必死で走り続けてきた人生を振り返り、「本当の豊かさ」について考えるようになった。
県内企業で半年間、就業し、経営課題の課題に取り組む信州大の「信州100年企業創出プログラム」をメールマガジンで見つけたのが転機に。客員研究員になり、山雅に在籍した。
松本は観光で数回、立ち寄っただけの土地だったが新たな可能性を感じた。「家族で楽しく暮らすために松本で一生懸命働きたい」と家族を説得。2019年春、覚悟を決めて2人の娘と両親を連れて移住した。
当初は不安だったが山雅の仕事を続けながら他ジャンルの人ともつながるように。「さまざまな人と交流することで企業と企業も結び付いていく。こういう経験は初めて」。東京では得られなかった感覚という。
手掛けるすべてが地域活性化につながる仕事。「課題が多いほどやりがいがある。本質にこだわり、新しい物語を紡ぎ出していきたい」と星野さん。東京で培ったプロデュース力を松本で発揮していく。