松本で「悠人書院」創業 福岡さん

第1弾の写真集「男の背中」出版

「芸術は爆発だ!」
芸術家の故岡本太郎さんのおなじみのフレーズが聞こえてきそうな写真。写っているのは生前の岡本さんの背中。自身が制作したモニュメントに向かって両手を広げ、まさに叫んでいるかのようだ。
松本市沢村1の福岡貴善さん(56)はこのほど、出版社「悠人書院」(同市旭)を創業した。第1弾として、岡本さんら各界の著名な40人の後ろ姿を撮影した写真家、高橋和幸さん(69、東京都)の作品集「男の背中」を出版した。
30年以上、都内の出版社で働いた福岡さんは昨年6月、松本に移住。出版以外の仕事も考えたが「やっぱり本が好き」。北杜夫、臼井吉見ら子どもの頃から愛読した作家ゆかりの地で、大好きな本や活字に囲まれて第二の人生を送る。

大物たちの素顔モノクロ写真で

写真集「男の背中」の掲載作品は、福岡貴善さんが勤めていた当時の中央公論社(現中央公論新社・東京都)の月刊誌「中央公論」で1993~95年に同名のタイトルで連載したものが中心だ。福岡さんが企画の担当者だった。
被写体は、政治家の後藤田正晴さん、俳優の笠智衆さん、建築家の丹下健三さん(いずれも故人)ら、各界のそうそうたる顔触れ。写真集を出版するために撮り下ろした美術家の横尾忠則さん、ダンサーの田中泯さんも登場する。
何かを語っているかのような「背中」を印象的に捉えたモノクロ写真をメインに、その人物が語った言葉などを記した高橋和幸さんの文章が添えられている。また「編集者の備忘録」として、撮影に同行した際のエピソードや裏話などをまとめた福岡さんの文もつづられている。
「大物たちの素顔が垣間見られる、印象的な企画だった。これを写真集にできて感慨深い」。福岡さんはそう話す。

大手出版社離れ 松本を移住先に

愛媛県出身。慶応大学を卒業後、ある出版社で3年働き、中央公論社に入社。編集や営業に携わった。昨年6月に体調を崩し、「満員電車に乗れなくなった」と同社を退職、移住を決意した。
子どもの頃、誕生日プレゼントで初めてもらった本が、旧制松本高校出身の北杜夫の本「どくとるマンボウ途中下車」。安曇野市出身の臼井吉見の「安曇野」も愛読し、碌山美術館にも訪れるなど、若い頃から思い入れのあった信州を移住先に選んだ。
第二の人生の仕事を再び出版業としたのは「人の思いを活字にするのが、やっぱり好きだった」から。構成やデザインなどを1人で担うため、パソコン1台でできるDTP(デスクトップパブリッシング)を勉強。「男の背中」の出版にこぎ着けた。今後、気軽に多くの人が本を出せるよう、少部数の出版に応えるほか、自費出版も引き受ける。
福岡さんは「出版の仕事は決して楽ではないが、今が一番幸せな気持ちで仕事をしている。『松本人』としての人生が始まった」と笑顔を見せた。

【インフォメーション】
「男の背中」出版を記念する「写真展&トーク会」を、10日午後3時に丸善松本店、同7時に信州松本城町文庫、11日午後2時に信毎メディアガーデン3階で開く。城町文庫のみ参加費1000円(ドリンク付き)。毎週火曜日の午後、城町文庫にパネルを出展する。写真集は6600円。福岡さんTEL090・9647・6693