【記者兼農家のUターンto農】#14 マルチ処理(下)

JAの処理事業、便利だけれど…

子どもの頃、使い終わったマルチシートを畑で焼いていた。加工用トマトの収穫が終わった秋口、枯れ枝とマルチをまとめて山積みし、火を付ける。燃え上がる火が、夕暮れに映えた。
ノスタルジックな光景だが、苦さも交じる。体に悪いものを吸い込み、まき散らしていたんだろうな、と。プラスチックの焼ける臭いを思い出すと、罪悪感も漂ってくる。
畑での焼却処分は、今はできない。1997年、廃棄物処理法が改正され、マルチやビニールハウスなどの農業用プラスチックの野焼きは禁止された。代わりにできた仕組みが、JAによる一括回収だ。
JA松本ハイランドの担当者によると、農家に請求するのは実費程度という。行政の肩代わりの感がするが、農家の仕事を丸ごと面倒見る、伝統的な農協(JA)の役割とも言える。
回収コンテナは「出荷者専用」と明示してある。出荷者が処理費の負担をしているから「専用」なのだ。
農業用プラスチックは、行政や産業廃棄物処理業者なども回収している。だが、手間をかけずに大量のマルチを処理業者に託せるJAの仕組みは、利用している身からすると、実にありがたい。
ただ、処理料の決め方が独特なのだ。出荷した箱数に比例、つまり、1箱分のレタスを作るのに必要なマルチの量から回収量を割り出し請求される。
出荷量とリンクさせるJAの戦略も分からないではないが、どうかなと思う点もある。同じマルチで2回収穫すると二重払いになってしまう。JAで買ったマルチでも、他のルートで出荷する作物の栽培に使えば理屈上、回収対象外だ。
マルチの価格に処理料を含め、購入量に応じて使える回収チケットを発行するなど、せめて売った分を回収する仕組みにできないものか。そうすれば、マルチを2回使う「省資源派」や、JAから出荷していない農家も利用でき、合理的だと思うのだが。