学校ではプールシーズンになりました。昨年はコロナ禍で水泳授業はやらない学校も多かったと聞きますが、今年は感染対策をして再開している学校が多いようです。
プールを楽しみに学校に行く子どもたちがたくさんいる一方で、大嫌いで夏になると憂鬱(ゆううつ)だというお子さんも一定数いらっしゃいます。実は私自身がそんな子どもでした。今も全く泳げません。
特に発達の偏りのあるお子さんの中には、感覚の偏りで水がかかることやシャワーが極端に苦痛な方、運動が苦手で泳ぐことに苦労する方、他人が入っているプールの水が口に触れるのは耐えられないという潔癖症的なこだわりがある方、慣れないことに恐怖を感じやすくプールが怖い方など、水泳授業に苦戦しているお子さんもいらっしゃいます。
感じ方は人それぞれなので、「冷たくて気持ちいいのに」「怖くないよ」「みんなやっている」といった一方的な押し付けでは抵抗感がかえって増してしまいます。また、恐怖の体験は記憶に残りやすく、強制的な指導は一生のトラウマになってしまうリスクがあります。
理想的な水泳授業は、習熟度別クラスで、プールに少しでも恐怖感がある人は、絶対に嫌なことは強制されない、プレッシャーをかけられないという保証をしたうえで、水の中に入って楽しかったと思える内容からスモールステップでやっていくというものです。
1年生のうちぐらいはある程度このようにやってもらえても、高学年にもなると泳げないとはいえないプレッシャーをかけられるのが一般的かもしれません。
でも高学年になっても水が怖い、顔を水につけるのも無理という子どもだっているのです。本人の恐怖感を無視するような水泳指導は世の中からなくなってほしいものです。
【なないろキッズ】 #60 水泳を恐怖体験にしないで
- 2021/07/06
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ