木版画制作に「生きがい」感じ

松本の太田克己さん 自宅にギャラリーも

松本市新村の版画家、太田克己さん(76)は、作品を20年以上続けている。自宅には別棟のギャラリー「木版画館」を設け、自身の多色刷りの作品約80点を展示、誰もが自由に鑑賞できる。「奥の深さを知り、またやりたくなる」と向上心も旺盛だ。版画を「生きがい」という太田さんを訪ね、作品を見せてもらった。

常に作品考え講師も務める

松本城、旧開智学校、安曇野市のワサビ田、池田町の七色大カエデ、諏訪湖の花火大会などなじみのある風景のほか、北アルプスの槍ケ岳に向かって帆船を進める「男のロマン」など、実際に見た数カ所の景色を頭の中で掛け合わせ、空想の世界を創り上げた作品もある。
「いつも版画のことを考えている」。近所に出掛けたり、旅行したりしたときも常に「題材にできる風景などはないか?」と探索。1つの作品が完成したら、すぐに次の作品に取り掛かれるよう、常にアイデアを蓄えている。

版画との出合いは電器メーカーの営業をしていた会社員時代。50歳になり、定年後の生き方を考え始めた。顧客回りをしていたとき、茅野市にある営業先の隣に、個人の版画作品の展示場を見つけた。そこで多色刷りの色鮮やかな作品に衝撃を受け、「版画をやろう」と決意。54歳で退職し、基礎を教わった後は、独学で版画制作を開始。5年後には完全にのめり込み、新村公民館の教室で講師を務めるなど、技術も向上した。

遊び心入れて工夫を心掛け

作品を作るうえでのモットーは、写真や見た景色をそのまま形にするのではなく、「見たときに、いかに面白いと思えるか」。色の構成や表現方法などは、常に新しい遊び心を入れ、見た人を飽きさせない工夫を心掛けている。
そのために、刷り方をいろいろと模索し、挑戦したいデザインは図書館で勉強もする。例えば、カエデの葉を三角形、サクラの花を丸にして、葉や花の1枚1枚を表したり、太陽の光を温かい表情の顔として表現したり。線などがくっきりと出てしまう版画で、「ふわっとした雪」を表現するのに5年を費やしたという。
「簡単だと飽きてしまうが、難しいから考える。だから面白い」と魅力を語る。
1度版木を彫ってしまうと、直しが難しいため、イメージ通りの下絵を描くこともポイント。下絵を丁寧に描き、色の構成を想定しながら彫る場所を決める。
色の出し方にもこだわりがある。単色で表現したことは1度もなく、全て下に塗った色を生かしながら色を重ね、それらを混ざり合わせて自分が想像した色に近づけていく。1つの作品に5~14枚の版木を使い、5~36色で刷るという。
「打ち込めるものがないと人生つまらない。版画と巡り会えてよかった」と笑顔を見せた。