仕事と趣味両立し仏像彫刻 降旗工務店社長・降旗さん

大工一筋70年。松本市島立の降旗工務店社長・降旗浄(きよし)さん(85)は、4年ほど前から趣味で仏像彫刻を始め、今も現役で現場に立つ。木を相手に仕事と趣味を両立させる“二刀流”生活で充実した日々を送っている。

頭や手使う彫刻「ぼけ防止にも」

住居と木材加工場を併設した自宅。居間には阿弥陀(あみだ)如来立像をはじめ、細部まで精巧に彫られた8体の仏像が並ぶ。「木と道具を使って物を作るのが好き。彫刻は頭や手を使うから、ぼけ防止にもなる」と降旗さんは笑う。
特に思い入れの強いのが聖徳太子像。聖徳太子は中国から大工道具の「差し金」を導入。大工に建築の基礎を教え法隆寺(奈良県)を建立したことなどから「大工の神様」といわれる。降旗さんが尊敬する人物だ。2、6、15、36歳と、節目の年齢の聖徳太子像を彫っている。

イメージが形に「幸せな気持ち」

旧会田村出身。15歳で職業訓練校に入って大工の技術を学び、松本市内の大工棟梁(とうりょう)に弟子入り。棟梁と一緒に都内に住み、戦後の住宅建築に携わった。数年後にかっけを患い松本市に戻り、療養しながら仕事を再開。24歳の頃に独立した。
丁寧で確実な仕事ぶりと親しみやすい人柄などで施主に信頼され、受注はほとんど口コミ。70年間で個人住宅のほか、神宮寺(松本市浅間温泉)の鐘楼や、千鹿頭神社(同市神田)の大鳥居など、100軒以上を手掛けた。
「やればやっただけ認めてもらえる。こんなに楽しい仕事はない。とても感謝している」と降旗さん。
ここ数年は新規の建築は受けずリフォーム中心に。その空いた時間を使って始めたのが仏像彫刻。同市内のカルチャーセンターの講座に入り、彫刻家の中澤達彦さん(箕輪町)に師事。基礎を覚えた。
かつて、軒下の飾り板「懸魚(げぎょ)」などを彫っていた経験もあり、仏像彫刻の上達も早かった。中澤さんに「好きなものを彫ってみて」と言われ、最初に取り組んだのが聖徳太子像だった。
建築用の端材を加工。仏像のデッサンから始まり、木材への書き写し、下書きに沿いながら彫り進めるなど、仏像彫刻は手間暇のかかる作業。住宅の設計図を読み解きながら材木を組み、仕上げていく大工の仕事と通じるものを感じる。主に夜が創作時間で、夢中になると時間を忘れ、気が付くと夜が明けている時も。
仏の体から出る光明を表現した光背や台座など、複雑で細かい部分が難しそうだが「一番、気を使うのは目。ちょっとしたことで表情が変わってしまう」という。
建築、彫刻とも作業中に木材の香りに包まれるのも気持ちがいい。降旗さんは「建物も彫刻も自分のイメージした形が出来上がった時が最も、幸せな気持ち」と、これからも二刀流を楽しみながら続けるつもりだ。