千年の森自然学校・朝重さんに聞く―自然体験学習への思い

北アルプスを望む約300ヘクタールの森にある自然体験型のキャンプ場「千年の森自然学校」(大町市平)。昆虫や植物に触れたり、電気もガスも水道もない生活を体験できたりと、便利な現代社会にいる子どもや大人に多くの気付きを与えてくれる場所です。学校の代表で森の探検ツアーのガイドも務める朝(とも)重(しげ)孝治さん(59)に、活動の魅力や体験学習に寄せる思いなどを聞きました。

バンガローやツリーハウスなどが点在するセンターエリアから一歩入ると、そこはカモシカや猿、リスなどの野生動物も多く生息する自然の世界。ひとたび森の中を歩けば、そうした動物たちの気配や、季節の移ろいを身近に感じることができます。学校では子どものみ、親子参加などさまざまなプログラムの宿泊キャンプを年間20回ほど開いています。
合言葉は「子どもも大人もやれることをやる」。火も水もない場所で、大切なライフラインを守るためにまず必要なのは、清流から水をくみ、まきを拾い、火をおこすことです。
「この森では水くみと、まきを作るのは子どもの仕事です。一人前に働き、大人から十分に褒められることで、自信ややりがいを感じられる。子どもの成長にはこうした成功体験を重ねることがとても大事です」と朝重さんは言います。
やることをやったら遊びの時間。ガイドと行く森歩きでは、子どもたちはいつしか石けりや木登りをはじめ、昆虫採集、川遊び、山菜やキノコ採り、イワナの手づかみ、時には動物の足跡を追い掛けるなど、自由に遊びをつくり出していきます。そうした制約のない遊びを体験するうちに、本来持っている「生きる力」を取り戻します。
「水くみ、まき拾い、森遊びを繰り返すうちに森を深く知るようになります。同時に一人では生きられない、仲間が必要となり、子どもたちの中に小さな社会ができる。ここは森と人、人と人のつながりを体験から学ぶ場所でもあります」
スタッフは子どもたちの「やりたい」「行きたい」にとことん付き合う心意気でいますが、何より大切なのは安全です。「森の遊びでは予期せぬハプニング、蛇や蜂などに出合うこともある。自由に遊ぶ中にも約束事はあるということ、小さなけがをしたらその経験から危険とは何かを学ぶこと、基本的には自己責任で遊ぶということを体験から学んでほしい」と力を込めます。

朝重さんは1961年、滋賀県甲賀市生まれ。大学卒業後は登山や秘境などが専門の旅行会社に入社。添乗員として訪れたインドやネパールの奥地でたくさんの子どもたちと出会います。
「貧しいと思われている国だが、彼らは目を輝かせて楽しそうに遊び、学びたいという意欲にあふれ、当たり前に家の手伝いをしてやりがいを感じていた」。日本でも人里離れた自然の中なら、同じように豊かな人間性や生きる力につながるような体験の場をつくれるのではないかー。
そんな思いに突き動かされ、9年勤めた会社を退職した後は日本各地のキャンプ場や森を視察し、現在の森に出合ったのは98年冬。山を所有する男性の「日本の子どもたちの目が開くなら、森一番の大樹を切ってもいい」という言葉とその人柄に強く引かれ99年、36歳で学校を開設。以来、森はいまだに新しい発見や出会いの連続と言います。

【メモ】 学校は「北アルプス森のくらしの郷(さと)」内。森への入り口は大町エネルギー博物館の南側。体験付きの宿泊が基本だが、近隣市町村在住の人は、日帰り利用も受け付けている(料金は1日1人500円。3歳未満無料)。宿泊はバンガローやツリーハウスのほか、テント泊も可。アスレチック風の遊べるツリーハウスもある。夏の宿泊キャンプに若干の空きあり。