作家・星野文月さん「栞日」拠点に活動

「対面」だからこそ伝わる思い

昨年末に東京から松本市に移住し、ブックカフェ「栞日」(深志3)と系列の銭湯「菊の湯」(中央3)でスタッフとして働きながら、文芸誌を中心にエッセーや短編小説を書いている星野文月さん(27)。自身の著作を通じて「本は、人をつなげる可能性がすごくあると知った」といい、その経験を基に、本が持つ力を発信しようとしている。

本そのものを応援

星野さんは2019年12月に初の著書「私の証明」(百万年書房)を出版。恋人が突然、脳梗塞で倒れ、ショックで景色が灰色に見える、食べ物の味がしない―などの症状に陥った、自身の体験を書いたノンフィクションだ。
「つらく悲しい出来事も、その時の感情は、二度と感じることができない」とつけ続けた日記を基に、写真を添えた。当時起きたことや自身の思いを、包み隠さずに書いた。
読者からは「共感した」「背中を押された」などの声が届いた。「特別じゃない人や、人生なんてない。どんな人の日常にも物語がある」と星野さん。同時に書くことの面白さや、1冊の本が出来上がるまでに多くの人が関わっていることを知り、「本そのものを応援したい」と思うようになった。

読書会など読者との交流も

富士見町出身。諏訪市内の高校に通ったが、当時は学校帰りに気軽に立ち寄れる書店がなかったという。「あのころ、自分の世界を広げてくれるような本に出合えていたら、自身にもっと変化があったのでは?」と振り返る。
「栞日」ではブックストア担当として、選書や棚づくりなどを担当。人に本を薦めたり、感想を伝えたりする際の表情や熱量は、対面だからこそ分かるとし、「本を通じ、人と人とが対話できる場所、ありのままの気持ちを発露してもいい場所」にしたいと言う。
SNS(会員制交流サイト)やブログで自分の意見を自由に発信できる時代だが、「SNSは自身の“ありのまま”の姿ではなく、良い面を切り取って発信する傾向が強いと感じる」と星野さん。「(発信者は)だんだんしんどくなると思う」
自身について駄目だと思っている点が、他人から良いと評価されることもある。「自分のことを分かってくれる人との出会いや、出会える場所が救いになる」
個人出版本など「小さな声」を拾う品ぞろえをするとともに、自身も書籍流通ルートに乗らない小冊子「ZINE」を作り、店頭やオンラインで販売することを検討中。コロナ禍が収まったら読書会などのイベントを開き、読者と交流したいとも考えている。