薄暗い林床を秘かに彩る夏の妖精「ショウキラン」(松本市)

鍾馗の顔を連想させるたたずまいで秘かに林床を彩るショウキラン=ニコンD5
AFマイクロニッコール105ミリ、7月1日午後4時50分、上高地の梓川左岸

「鍾馗」の名あやかり平穏願って

北アルプス・上高地で、ショウキラン(鍾馗蘭)の花にマイクロレンズで迫り、リアルな顔の表情の撮影に成功した。
学名Yoania Japonica(ヨアニア・ジャポニカ)。ラン科ショウキラン属の多年草。菌類との共生により栄養を得ている菌従属栄養植物である。ショウキランの名は、疫病神や魔を追い払う神「鍾馗」の烏帽子姿に似ていることから付けられたとされる。記者は、威厳あるひげに目や鼻、口に見える顔の模様が由来ではないか─と思っており、長年にわたり狙ってきた。
7月1日午前7時。梓川左岸の自然研究路や登山道沿いの林内を目を凝らしながら歩き回った。探し始めて2時間。シナノザサが交じる薄暗い針葉樹の林床に目をやる。「あった!」。6個の赤紫色の花は、上高地の夏の妖精のように映る。だが、脳裏に描いた構図ではない。その後1株探したが、すでに花の季節を過ぎていた。
午後4時半。登山道脇の大きな風倒木に隠れて咲く1株を見つけた。登山道に腹ばいになり花を見た瞬間、じっとこちらを見詰める花の目線と記者の目線がぴたりと合った。「鍾馗様の顔だ!」。ようやく見つけたこだわりの構図。「鍾馗にあやかり、早く新型コロナが収束しますように」。祈りを込めながらカメラを地面に付け、約3センチのかれんな花に向けてシャッターを切った。
(丸山祥司)