農地で太陽光発電「ソーラーシェアリング」の現場

「ソーラーシェアリング」をご存じだろうか。同じ農地で、収穫量を下げずに営農と太陽光発電を同時に行う「営農型太陽光発電」とも呼ばれる取り組みだ。
売電による継続的な収入や電力の自家利用による農業経営改善への期待から、農地の一時転用許可による発電設備の設置が2013年に認められた。県によると3月末で県内の導入数は50件という。
安曇野市の丸山邦雄さん(54)は、約600平方メートルの農地に支柱を立て、上部全面に太陽光発電パネルを設置し、下部空間でラズベリーを育てる。栽培に必要な日照量を得るため、パネルは間隔を空けて配置。陽光を受けたラズベリーは葉を茂らせ真っ赤な実を付けていた。「シェアリング」の現場を訪ねた。

売電で費用回収 半日陰で利点も

人の背丈以上に育った木で赤く熟したラズベリーの実は、今が収穫のピーク。園主の丸山邦雄さんが丁寧に摘み取る。頭上に並ぶのは、間隔を空けて設置された短冊状の太陽光発電パネルだ。
高さ3.5メートルほどの支柱の上に、約50センチ×150センチのパネルを計288枚設置。パネルは、簡単な手間で角度を変えられる可動式だ。太陽の位置を見ながら天気の良い日には2、3回角度を変え、発電効率を高める。
ラズベリーは半日陰での栽培が好ましいとされる。生育に必要な日照量を確保しつつパネルが日陰をつくり、地温の上昇や土の水分の蒸発も抑えられる。「遮光による影響は、感触ではほぼない。むしろ利点が多い」と丸山さん。
再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定価格で買い取る固定価格買い取り制度を活用し、20年間は売電する。発電設備の設置費用約1000万円は約10年で回収できる計算で、その後は収入として見込める。「将来は蓄電池を設置し、自宅や親戚宅で使う電力を賄えれば」と考えている。

手続き簡易化や 支援充実に期待

丸山さんは、勤めていた会社の早期退職制度を利用して50歳で退職。ソーラーシェアリングに着目し、退職した2017年から新しいスタイルでの農業を始めた。
会社員のころ、再生可能エネルギー関連の話題を取り上げた雑誌の記事が目に止まり、興味を持った。家の農地を守る選択肢も含めて退職後のプランを考える中で、収入につながり、植物による二酸化炭素(CO2)吸収と再生可能エネルギーによるCO2排出削減の効果もあることから、導入を決めた。
寒さに強く半日陰を好む特性や、菓子製造といった一定の需要も見込める作物としてラズベリーを選んだ。果樹栽培の経験はなく、県内の園を見学したりネットで情報を得たりと手探りで、農薬や化学肥料を使わずに生産。昨年から収穫量も増え、中信地区の製菓店や旅館、東京の飲食店と取引している。
取り組みを始めて丸4年。「初期投資はかかっても、小規模農家にとって収入の助けになるのはよい」と丸山さん。農地への発電設備の設置は、支柱部分の農地の一時転用許可が必要。下の農地(荒廃農地の再生は除く)では地域平均の8割以上の単収を確保するといった条件が求められる。担い手や荒廃農地などを除き、3年ごとの許可更新が必要だ。
丸山さんは「手続きの煩雑さが改善され、融資や支援制度が充実すれば普及が進み、若い世代などの農業参入の後押しにもつながるのでは」と期待する。