信州大医学部子どものこころの発達医学教室・小児科医新美妙美さんに聞く-コロナ禍の環境変化親の対応は

コロナ禍で気になる様子が見られる子どもたちが増えています。手洗いの頻度が極端に多くなった、暑くても周りに人がいなくてもマスクを外せない、学校に行き渋る…。このようなわが子に、親はどのように対応すればいいのでしょうか。MGプレス連載「なないろキッズ」を執筆する信州大医学部子どものこころの発達医学教室の小児科医・新美妙美さん(43)に聞きました。

心配や不安和らげる努力を

─コロナ禍以降、子どもたちの相談に変化はありますか。
「中南信の病院で発達障害や不登校、心身症の子どもたちの専門外来を担当していますが、初診の人の中にはコロナ禍の影響を受けている方もいます。手洗いをやめられない、休校明けから行けなくなった、外出しづらくなったなどの相談もあります。
一方で、コロナ禍以前からの患者さんは、もともと対人面でのストレスを感じている人も多いので、行事や社交的な場面が減り、ソーシャルディスタンスを保つのはかえって楽という声もあります。ただ、全体的にみるとコロナ禍の影響でストレスを感じている子どもたちは多いと感じます」
─手を洗い過ぎる、マスクを外せない、感染を恐れて外出を渋るといった子どもたちの心理は?
「医学的にみると、一つに強迫性障害(強迫症)があります。頭では大丈夫と思っていても、汚れているのではないかという不安が襲ってきて何度も手を洗ってしまう。そのことで日常生活が破綻してしまうと強迫性障害になります。障害まではいかなくても、潔癖の傾向が強い人もいます。
また、発達障害の一つ、自閉スペクトラム症のこだわり症状が悪化した潔癖傾向の場合もあり、その人の背景をみないと区別するのは難しいです。
強迫性障害や潔癖になりやすい人に多い傾向があります。▽生真面目でルールはきちんと守らなければならないと思う▽ちょっとしたことが心配になる▽繊細で周りの人の感情を受け取りやすい▽先生や権威のある人の言うことをその通りにやらなければならないと思う─などです。
手を頻繁に洗ったり、マスクを外せなくなったりするきっかけはコロナへの不安かもしれませんが、原因がそれだけとも言えません。社会の不穏な雰囲気、学校生活の制約、家計が大変になったという大人の会話からも、繊細な子どもは不安を受け取ります。
学校に行き渋る子の中には、コロナ禍の休校がちょうど年度替わりに当たったため、クラスや担任が替わった、勉強が難しくなったなどの影響もあるかもしれません。または、コロナに全く関係のない受験や人間関係かもしれません。
その子にとって何が大変になっているのかを広い目で見て、心配や不安を取り除いてあげることです」

正しい情報共に触れる機会を

─家族はどんな態度で接すればいいでしょうか。
「不安に思っている気持ちをないがしろにしないことです。『大丈夫だよ』『神経質なことしないの』などと口うるさく言うと、子どもは『大丈夫じゃないと思っているからやっているのに』とガードが固くなってしまいます。かと言って一緒に心配してしまうと、余計に不安をあおってしまいます。
まず、『あなたは心配なんだね』と冷静に子どもの気持ちを理解します。その上で、正しい情報に子どもと一緒にアクセスします。元々真面目な性格なので、信頼できる機関や専門家が発信する情報は受け入れやすいです。
正しい手の洗い方、手を洗い過ぎると皮膚が荒れて、逆にばい菌がつきやすくなってしまうこと、マスクは運動するときや暑い日の登下校中にしていると熱中症の危険があることなどを、専門家が発信する情報を一緒に見て、『やり過ぎはかえって健康を害するね』と確認しましょう。
また、本人と家族の生活に支障が出ない程度であれば、直そうとせずに許容しましょう。波があり改善することもあります。生真面目な性質は変わらないので、本人のこだわりや儀式と思って付き合いましょう。マスクは室内用・外用と分けて、外用はスポーツ用などの薄いマスクに変えさせるのも有効です。
しかし、症状のせいで生活に影響が出ているとき、家族が巻き込まれて疲弊してしまうとき、長く続いて困るときは専門機関に相談してください。ただ、専門機関は予約がとりづらいこともあるので、まずはスクールカウンセラーや市町村の子育て・発達に関する窓口に相談するのもよいでしょう。必要に応じて専門機関につないでもらえる場合があります」
─2学期に向けた家族の心構えは?
「夏休みはリラックスして症状が落ち着いている子もいるかもしれません。学校が始まり元に戻ったら嫌だなと思うと、身近な人の心配を感じとるので、『悪化した時はした時だ、そのとき考えよう』と思うようにしましょう。学校が始まって悪化した場合は、学校生活の窮屈さや何かが原因にあるかもしれないので、担任などに話して事情を共有するといいでしょう。
親御さんには『生真面目なタイプのお子さんに付き合うのは手が掛かるけれど、何とかなるよ!心配いらないよ!』と伝えたいです」