映画監督・三好大輔さんが全盲の美術鑑賞者のドキュメンタリー映画「白い鳥」製作

目が見えない人はどうやってアートを見るのか?
そんなテーマで描いたドキュメンタリー映画「白い鳥」。作ったのは映像製作会社アルプスピクチャーズ(松本市清水)社長で、映画監督の三好大輔さん(49)だ。
「全盲の美術鑑賞者」を自称し、日本全国の美術館を巡る白鳥建二さん(51、茨城県)に焦点を当てた作品。友人と出掛ける美術鑑賞の旅路、健常者の社会で軽やかに暮らす日常生活を追う。
「障害がある人もない人も、同じ世界で生きているということが当たり前の社会になってほしい」。そんな願いを初のドキュメンタリー作品に込めた三好さん。両者がフラットな状態で付き合うことの楽しさ、居心地の良さがある、そんな気付きを与えてくれる作品の上映会が松本市で開かれる。

言葉を通して作品を見る

白鳥建二さんが、美術鑑賞仲間という2人の女性と一緒に茨城県の美術館で絵画作品の前に立つ。作品の構図や表情、イメージなどを説明する女性。白鳥さんは女性たちの少し後ろに立ち、2人の会話を聞きながら「うん、うん」「へぇー」などの言葉を発する。多くは語らないが、表情は常に笑顔だ。
白鳥さんが編み出した美術作品の鑑賞法。「言葉」や「会話」を通して「見る」のだという。
「どうやってイメージしているのか?」。素朴な疑問に対して白鳥さんは「何人かで作品を見ていて、そこで起こることが好き」「ちゃんと伝わりましたか?イメージできましたか?という質問が一番嫌い」などと答えている。
白杖(じょう)を巧みに使って公道をすたすたと歩き、スーパーマーケットで買い物をしたり、自宅で包丁やガスコンロを使ってそうめんを作ったりする日常生活も描かれる。最後に「美術を人と人と一緒に鑑賞する先には何がある?」の質問。白鳥さんの答えは…。
三好大輔さんは「言葉で鑑賞するというスタイルがとても新鮮に見えた。作品を説明する人が言葉を重ねるうちに、その作品の核心に近付いていくようで楽しかった」と話す。

三好さんの日本大学芸術学部時代の同級生で、ノンフィクション作家の川内有緒さん(東京都)が、雑誌に白鳥さんの鑑賞の様子を載せたのが、映画製作のきっかけだ。
約2年前に白鳥さんの美術鑑賞仲間になった川内さん。作品に登場する女性の一人は川内さん本人が演じている。昨夏、「この新しい美術の鑑賞法を映像で伝えたい」と、三好さんに依頼、約5分の映像にまとめた。昨年12月、文化庁の「バリアフリー型の動画配信プラットフォーム事業」に採択され、三好さんと川内さんが共同監督として映画化した。
三好さんのライフワークは「地域映画」。これまで全国各地に眠る昭和30~50年代の8ミリフィルムを発掘しては、自ら名付けた地域映画に仕上げてきた。
「この映画の登場人物は、お互い分かり合えない中でも一緒にいるうれしさがある。白鳥さんの、健常者の世界に踏み出していく勇気などを感じてもらえれば」と、三好さんは期待する。

上映会は9月4日午後2時(上映後、監督のトーク)と7時、松本市中央1のMウイング。上映時間50分。前売り1000円、当日1200円。問い合わせは松本シネマセレクトTEL0263・98・4928