松本の小林さん「シンデレラ・ストーリー」 SNSから漫画家へ

無名の女性が成功や幸せをつかむ「シンデレラ・ストーリー」。子どものころからイラストや漫画を描くのが好きだった松本市島立のきゃめろん(27、本名・小林メルベ陽子)さんは、その道を歩んでいるかのようだ。
コロナ禍で勤め先が休業になり、できた時間を利用してツイッターに漫画をアップしたところ出版社の目に止まり、あっという間に漫画家デビューを果たした。8月には単行本にもなった。
その漫画のタイトルは「寿命ですよ、お客さま」(マイクロマガジン社)。ハートフルコメディータッチのストーリーだ。単行本化に伴い会社を辞め、本格的に漫画家業に取り組むことにした。
「漫画家は掃いて捨てるほどいる。勝ち残らないと」。本当のシンデレラになれるかどうか─。これからが勝負だ。

コロナ禍の中「死」テーマに

漫画家、きゃめろんさんの初の単行本「寿命ですよ、お客さま」は死がテーマの作品。主人公は、人間が寿命を迎えるときに現れる死をつかさどる3人の「天の使い」で、最期をサポートし、死者を「彼の地(ビヨンド)」に送るのが彼らの仕事だ。
主人公の風ぼうは今どきのイケメン男子。「走馬灯の編集」「葬儀のライブ中継」などの職務を淡々とこなす姿がシュールに描かれている。彼らの前に現れる「仮死状態」の少年に振り回される様子を描いている。
「コロナ禍で多くの人が亡くなり、自分は身近な人の死に目に会えなかった。死がキーワードになった」。きゃめろんさんは創作の原点についてそう説明する。「死は終わりであり始まりでもあると思うが、生きている間はその時間を大切にしてほしいということを伝えたかった」という。

アパレルOL休業中に描く

松本第一高校から武蔵野美術大学に進学。子どものころからイラストや漫画を描くのが好きで、「一度は漫画家になってみたい」と夢見ていた。だが、大学卒業に当たり「現実的でない」とアパレル会社に就職。1年間、都内で働いた後、宮崎県内の小売店に配属された。
縁もゆかりもない宮崎の地。休日は「漫画ばかり描いていた」と振り返る。昨年5月、コロナウイルスの感染拡大で、小売店が休業に。時間ができたため「ストーリー性のある漫画を描いてみよう」と思い立って生まれたのが「寿命ですよ|」だった。
試しに第1話をツイッターに投稿。するとあっという間にフォロワーが2万件に達し、3、4日後にはマイクロマガジン社の編集者から連載の打診があった。「まさかと思った。これまでの人生で一番うれしかった」ときゃめろんさん。
昨年10月、コミックの総合サイト「pixiv(ピクシブ)コミック」で連載をスタートさせ、漫画家デビュー。好評を得て、単行本化も決まった。
会社勤めに加え、連載と単行本の出版準備が重なり「心が折れそうになるぐらい忙しかった」。今年になって「自分の夢と向かい合う」と漫画家専念を決意、実家に戻り創作活動に励んでいる。
「漫画家になるのがゴールかと思っていたが、スタート地点に立っただけ。先は全く見えない」。成功に向けた期待の一方で不安もあるが「好きなことができる幸せを感じている。読者の心に爪痕を残す作品を描きたい」と前を向いた。
単行本は県内の書店で購入できる。897円。