【ガンズリポート】「前選択」と「山雅らしさ」

ふさわしい攻守のスタイル求め

松本山雅FCは名波浩監督が就任して2カ月余り、攻撃のキーワードになっているのが「前選択」だ。その心は、ボールを前方に送るプレーを選ぶこと。進む意識改革は、結果の改善に結びつくか。
前選択の旗印の下、ボールを持った選手は横パスではなく、縦パスを狙う。周りの選手は、受け手になるために動く。「徹底してオーバーラップ、クロスオーバーだ」とコーチが叫び、前の選手を追い越す動きを繰り返す練習もあった。
練習の雰囲気はいい。8月下旬、名波監督は「選手は2カ月でやり方を吸収してくれた。前選択の意思がいい方向に出ている」と手応えを口にした。
ただ、ゴールできない試合が多い。6度目の零封負けを喫した4日のジュビロ磐田戦後、名波監督は「1点、1勝で自信を回復するのはなかなか難しいかもしれない」。辛抱を覚悟している。
磐田戦では、2試合連続で4失点した守備の不満も漏らした。「ボールへの執着心が薄れている」。主将のMF佐藤和弘も「球際がちょっとぬるいかな」と自戒した。
監督交代後、「山雅らしさ」という言葉がチームから聞こえてこなくなった。「球際の激しさや粘り強さといったことは、『山雅らしさ』を持ち出すまでもなく、サッカーの基本」。選手はそう口をそろえるが、変革の中でこの言葉を脇に置くうちに、もともとの特長も失うようでは本末転倒だ。
前へのテンポよい攻めと、厳しく粘り強い守りが両立することは、磐田が実践していた。山雅にふさわしい攻守とは。“解”を求めながらの残留争いが続く。