学びと体験大切に 論述と読解のゼミ

Tera Klaso(テラ・クラッソ)松本市

JR松本駅前にあるビル3階の一角で昨年10月、現代文読解と小論文の作成に特化した塾がスタートした。名前は「TeraKlaso(テラ・クラッソ)」。
立ち上げたのは松本市内の通信制高校「信濃むつみ高校」で長年教頭を務めた竹内忍さん(62)。主に利用しているのは、小論文や面接などで合格者を選ぶ「総合型選抜」での大学進学を目指す若者たちだ。
「受験のための小論文の塾」というだけではない。さまざまなボランティアやフィールドワークを通して「自分は何に関心があるのか」に気づき、それを言語化、進みたい道を見つけることを最大の目的としている。「学びと体験/論述と読解ゼミ」を標榜するユニークな塾の扉をたたいてみた。

「言語化」で 進む道見つけて

19世紀に世界共通言語を目指して作られたエスペラント語で「地球が教室」を意味する「テラ・クラッソ」。部屋に黒板はなく、壁際や中央に置かれた机と椅子で、生徒たちが思い思いに勉強している。毎日来る子もいればたまに顔を出すだけの生徒も。生徒数は約20人。半数以上が信濃むつみ高校の生徒だ。
予備校の授業が終わった後、毎回足を運ぶ武内美南さん(19、松本市開智3)は「みんな好きなことを自分のペースでやっているけれど、空気が温かい。ここは日中の居場所」と話す。
他人にすごく気遣いしてしまうという武内さんにとって、学校は居づらい場所だった。みんなで同じことをするのにも違和感があった。小中学校へは通ったが、高校は3カ月で辞め、むつみへ転入。今年で4年目になる。
テラ・クラッソに来るのは今のところ、武内さんのように学校生活になじめない若者が多い。

社会との接点積極的に外へ

主宰者の竹内忍さんは、生徒を積極的に外へ連れ出し、社会との接点を提供する。7月には東日本大震災の東北被災地へ5日間出掛け、地域住民と交流した。
小論文は、そうした「体験」を言語化することで「経験」にしていく作業。「いろんな人と出会い、自分でできることや大学で学びたいことを見つけ、自分の可能性を広げていってほしい。『この社会は君の存在を求めている』ということに気付いてもらいたい」と話す。

大学で何学ぶか自分の思い整理

武内さんの目標は医師になり、国境なき医師団で活躍すること。これは竹内さんらと中国へ行き、貧富の差を目の当たりにしたことがきっかけとなった。同じくむつみの生徒で、週1回通う増渕心咲さん(17、塩尻市広丘野村)。美容師を目指していたが、竹内さんと一緒に国内外のさまざまな人と交流し、小論文を通して自分の思いを整理した今、大学で教育社会学を学びたいと思うように。違和感を覚えながら通った小中学校時代を「心に空いた穴のよう」と振り返る。「教育社会学を学び、その穴を埋めた上で人生の次のステップへ進みたい」

7月末、テラ・クラッソは福島原発事故後の現在と未来を考える催しを松本市のMウイングで開いた。そこには、半世紀にわたり原発の危険性を訴えてきた元京都大原子炉実験所助教の小出裕章さん(同市)に臆せず質問する2人の姿があった。
小出さんの「溶け落ちた炉心をつかみ出す手だては今のところない。これからどうすればいいのかも正直分からない」との言葉を聞いた武内さん。「もうどうしようもないんだと痛感したことで、自分も声を上げる一人になろうと決心できた」ときっぱり。「いろんなことを知った上で医師になりたい」と話す教え子に、竹内さんは温かなまなざしを向けていた。
テラ・クラッソへの問い合わせは、メール(info@teraklaso.jp)またはTEL0263・33・8404