リサイクル店で見つけた「お宝」60年前の松本産ギター

富士弦楽器製造が創業翌年に製造 60年前のクラシックギター

松本市内にあるリサイクルショップのジャンク品コーナーで掘り出し物の「お宝」が見つかった。
今から60年前、富士弦楽器製造(現フジゲン、同市平田東)が2年間だけ製造していた松本産のクラシックギター。ぱっと見は「壊れかけの古いギター」だが、地元のギター産業関係者にとっては、値段が付けられないほどの貴重品だ。
見つけたのは、ギターマニアで会社員の伊藤正さん(57、惣社)。フジゲンの創業家に寄贈し、創業者の長男、横内照治さん(67、筑摩)立ち会いの下、製造に携わった杉原誠さん(77、波田)とも再会を果たした。

ギターマニア伊藤さん発見

地元のギター産業の歴史も研究している伊藤正さん。5月27日付の本紙で紹介した、自作のミニチュアギターが米ロックバンド「チープ・トリック」のギタリストに喜ばれた、あの熱狂的なギターマニアだ。
約20年前からリサイクルショップを巡り、掘り出し物のギターを見つけることも趣味にしている。仕事などの都合で最近は足が遠のいていたが、6月に「虫の知らせ」(伊藤さん)で松本市平田東のリサイクルショップに立ち寄り、「お宝」に気づいた。
見つけたギターは、1961年に作られた「Demian(デミアン)」。伊藤さんも「存在は知ってはいたが、見るのは初めて」という。「60年代製の国産ギターが出ること自体が珍しく、自分はそれほど興味はなかった。しかし、フジゲンの関係者にとっては貴重だと思い購入した」と話す。

松本ギター産業の歴史的資料

フジゲンの前身、富士弦楽器製造は1960(昭和35)年に創業した。当初はバイオリン製造だったが、市場規模などを踏まえて、すぐにギター製造も開始。一帯のギター産業の礎を築き、80年代には世界一の出荷量を誇った。
4日、フジゲン創業者の一人、横内祐一郎さん(93)の同市筑摩の自宅。60年6月に松本工業高校の定時制に通いながら17歳で同社に入社し、ギター製造に携わってきた元職人の杉原誠さんは、自分が手掛けたギターと60年ぶりに再会した。傍らにはフジゲン大町工場に展示されている、60年製の同型のギターもあった。
杉原さんの記憶によると、自身が手掛けたのはヘッド部分のブランドマーク「Demian」の転写印刷と、ボディー側面の木材の「胴曲げ」。わが子を抱くようにギターを眺めた杉原さん。「まさか出てくるとは。びっくりした」と戸惑った様子。「こんなにきれいな状態なのは、使った人が大切にしてくれたおかげ。幸せ者だ」と目を細めた。
ギターを譲り受けた横内さんの長男、照治さんは「このギターは国内流通したとしても大都市圏だけ。父から直接買った人の家族などが店に持ち込んだのでは」と推測。「会社の歴史そのもの」と感慨深げに語った。
見つかったギターは60年製と一緒に大町工場に展示する予定だ。