【講演会聞きどころ】子どもの支援・相談スペース「はぐルッポ」代表・西森尚己さん

価値観とらわれず受け入れて

子どもが不登校になると、学校や保護者は「なぜ」を追及する。いじめられる、先生と合わない、友達とコミュニケーションが取れない…。そういう原因を挙げて、対症療法を考えている。
でも、子どもの話を聞いていると、何となく嫌だ、疲れる、クラスの雰囲気が悪いと、曖昧な言い方をする。本当のところは複雑で、表現しにくいものだと思う。原因を子どもの側に求めていくと、もっと心理的に追い込むことになる。
はぐルッポは、子どもが自分を取り戻し、自分で考え、自分で決めて、その一歩を踏み出すためのエネルギーを育むお手伝いをしている。子どもたちがありのままの自分でいられて、安心して失敗することができる場所。ただいていい場所であり続けたい。
大人たちは、個々に寄り添うと言いながら、「普通」「常識」の物差し、世間の価値観で評価してきた。大人が、そのままでいいと認め、粘り強く待つことで、子どもは自分の力で変わる。
ある子は、父も祖父もF高校出身。でも、中2の冬、先生からF高校は無理だと言われると、自分に価値がないと思って、部屋にこもり、死にたいと言うようになった。
母親が相談に来て、はぐルッポに来るようになった。魚のことにすごく詳しくて、近くの女鳥羽川でひたすら釣りをした。半年以上たって「高校に行きたい」と。遊んでいる子の隣で黙々と勉強し、Fではない高校に入った。今は、自分と同じような子の力になりたいと、大学でカウンセラーを目指している。
文部科学省の有識者会議は2016年の報告書で、不登校はどの子にも起こり得るとした。この年には、教育機会確保法が制定され、学校以外の場で行う、多様で適切な学習の場の重要性、不登校児童生徒の休養の必要性がうたわれた。
子ども観の当たり前を問い直し、家庭も、学校も行政も、世の中も、子どもたちを信じて、心の声を聞きながら変わっていかなければならない。