白露の明神池で忍び寄る秋をスケッチ(上高地)

この秋一番の冷え込みとなった白露の朝、明神池の岸辺で偶然出合った一瞬の光彩=7日午前6時50分、ニコンD5、ニコンED AF-S ニッコール80-200ミリ

クモの巣と波紋静と動の造形美

二十四節気の「白露」を迎えた7日朝の上高地・明神池。午前6時の気温は5・1度だ。秋の季語でもある白露は、「立春」から数えて15番目の節気。一つ前の処暑からは15日目ごろになる。夜間、大気が冷え込み、草木の葉に朝露が宿るころとされる。
穂高神社奥宮の境内にある明神池は、一之池と二之池からなり、「鏡池」とも呼ばれる。静寂が漂う水面に、明神岳の険しい岩肌と奥深い針葉樹の森影を映し込み、神の領域の風情が広がる。
忍び寄る秋の光景を探しながら一之池の木道を歩く。岸辺に細かな水滴を付けて白く輝く小さなクモの巣を見つけた。大きさは左右18センチほど。水面側へ傾いた枯れ草の先端部分、そこに張られた繊細な造形美に見とれていると、シャッターチャンスが突然訪れた。
近くで10センチほどのイワナらしき魚が跳ねた。飛び散る水しぶき。水面に幾重にも波紋が広がった。水滴をまとったクモの巣と波の模様が演じる静と動のコラボレーションが、格好の構図を生んだ。
暑さにコロナ禍が重なった夏が過ぎた。疲れた心に癒やしと潤いの贈り物になれば-。そう願ってシャッターを切った。
大自然が刻む暦は、中秋の名月(今月21日)を織り込みつつ「秋分」(同23日)を経て、やがて「寒露」(10月8日)へ。“季節のリレー”は、日増しに秋色を濃くしていく。

(丸山祥司)