“スズメバチ”駆除も養蜂も

ハチ好きだからこそ二つの顔

知らず知らずのうちに、家の軒先や天井裏に巣を作り、住んでいる人を困らせたり、危険にさらしたりするスズメバチ。このハチを駆除する「スズメバチハンター」を40年以上続けている。
塩尻市広丘野村のタクシー運転手、小岩井隆昭さん(70)。スズメバチを「狩る」一方で、自身が耕す畑の片隅に地バチ(クロスズメバチ)とニホンミツバチの巣箱を置き、趣味で養蜂もしている。
幼いころからハチに慣れ親しんでいる小岩井さん。「ハチが大好きで、ハチのことを知っているからできる」と小岩井さん。「ハチの世界は未知。だから楽しいし、やめられない」とも。
ハチの「ハンター」と「愛好家」二つの顔を持つ小岩井さんの現場を訪ねた。

今年7個目の巣依頼に手際よく

今月10日、塩尻市片丘の住民から「トイレの天井裏にあるスズメバチの巣を駆除してほしい」との依頼が、小岩井隆昭さんに寄せられた。翌朝、現場に急行。網の付いたヘルメットをかぶり、迷彩柄の服装の小岩井さん。ハチが出入りする穴からキイロスズメバチの巣と確認した。
自身が作った木筒に細かく棒状に切ったセルロイドの束を入れ、たばこの火で燃やし煙を発生させる。それを巣に差し込み、ハチを気絶させると、その間に天井に穴を開け巣を取り出し、ハチをビニール袋に手際よく入れた。
駆除は終了。と、思いきや、まだ大切な作業がある。巣に戻ってくるハチの捕獲だ。小岩井さんは捕虫網を巧みに操り、飛んでくるハチを次々と捕まえた。
「いったん、巣を出たハチが戻ってくるまでの時間は約45分」と小岩井さん。ちょうど、そのくらいの時間がたつと、辺りを飛び回るハチは見当たらなくなった。
小岩井さんは、今シーズン7個目という巣のかけらを手に、「こんな模様、人間の手では絶対にできない。芸術だ」と、ハチのなせる技のすごさを強調した。

一日の仕事終え畑へハチの世話

同市片丘に小岩井さんが借りている畑。クロスズメバチとニホンミツバチの巣箱計5箱が置かれている。タクシーの仕事を終え、夕方、ここに来てハチの世話をするのが日課だ。「餌をやって大きくなるハチを見るのが楽しい」と小岩井さん。突然、立ち上がり、捕虫網を手に、話をしていたハウスを飛び出した。
数分後、小岩井さんが飼っているハチを襲いに来たオオスズメバチを捕まえて戻ってきた。羽音でこのハチの襲撃を察知しているという。「こいつは天敵。放っておけばハチを全部持っていかれる。ごうがわくせ」と言って、焼酎の入った瓶にぽとりと落とした。

番組放映で評判駆除依頼続々と

幼いころ、父親にクロスズメバチの巣を探す「すがれ追い」に付いていき、ハチに興味を持った。同時にスズメバチに刺され、「大人になったら俺が捕ってやる」と思った。
初めてスズメバチの巣を駆除したのは25歳のころ。その様子をビデオ愛好家が撮影し、テレビ番組に投稿。これをきっかけにハンターとしての評判が広まり、駆除の依頼がくるようになった。多い時で1シーズン30個の巣を取ったという。
地球温暖化で、スズメバチは近年、11月ごろまで活動するようになったという。小岩井さんは「巣で困っている人がいれば取りにいく。自分はハチと一緒にいられることが最高」と巣箱のハチを見詰めた。ハチの駆除は塩尻市内のみ。