【ビジネスの明日】#29 トップラン社長 清沢輝彦さん

旧車や個性的な車の魅力発信

「古い車に乗っていると、その時代に思いをはせ、思い出もできる」。こう語るのは中古車など販売、トップラン(松本市平田東3)の清沢輝彦社長(57)だ。新車の販売台数減が中古車市場にも影響を及ぼす中、大の「車好き」は旧車や個性的な車の魅力を発信し、お客との交流の輪を広げるなどして店の独自色を出している。
「新車が売れないと、下取り車が出ない。この業界は今、需要と供給のバランスが崩れている」と嘆く。世界的な半導体不足に加え、コロナ禍で、東南アジアでの部品調達が停滞し、新車は減産、納期も遅れる。この影響が中古車市場にも及んでいるのだ。
「お客さんは、納期が長くても新車を買うか、多少割高でも高年式の中古車を買うか迷っているのでは」と推測する。
屋外の展示スペースに並ぶ車は、輸入車がほとんど。売れる季節が限定され、仕入れにはリスクがあるというオープンカーも多い。
「売ることだけを考えていたらつまらない。自分の好きな車を仕入れ、それが在庫になってもかまわない」と強調。商品にするために仕入れた旧車のほか、ポルシェやランボルギーニといった高級スポーツカーに自ら乗り、同社のモットー「楽しむカーライフ」を貫いている。

19歳で、松本市内のトヨタ自動車の販売会社に就職してから車一筋。根っからの車好きは自身のアイデアで、トヨタの往年の名車「1600GT」や「スポーツ800」などをショールームに展示したこともある。
平成以降、エアバッグやABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が普及し、ハイブリッド車が登場するなど、車が安全性や経済性を重視する方向に進むと、「車に個性がなくなり、同じ車しか売れなくなった」と、2009年にトップランを創業した。
6年ほど前から、旧車や名車、スーパーカーなどの「車好き」が集うイベントを定期的に開催。車好きの輪を広げると同時に、こうした車の情報収集もしている。
現在では、自治体のイベントとしても呼ばれるようになり、11月には朝日村のあさひプライムスキー場、来年4月には御開帳に合わせ、善光寺(長野市)を会場に100台以上を集める予定だ。
「旧車などはニッチな市場だが、ファンは全国にいる」とし、「これからも自分の車を見せたい人に場を提供し、それが地元経済の活性化につながれば」と意欲的だ。

【プロフィル】
きよさわ・てるひこ1964年、朝日村出身。松商学園高校卒。トヨタ自動車の販売会社に就職し、営業職や販売店の店長を務める。2009年、松本市白板にトップランを創業し社長就任。18年、現在地に移転。朝日村在住。