【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#14 あぜのヒガンバナには理由が

ヒガンバナ(彼岸花)、別名曼珠沙華。私を含む山口百恵さん世代の方には、曲名の「マンジューシャカ」の方が、通りがいいかもしれません。今の時季、田のあぜに咲いているのを見掛けることはありませんか。それは偶然ではなく、大きな理由があるのです。
以前、この連載で自然農法の水田は水持ちが大事と書きました。雑草を抑えるのに深水管理が必須です。でも、それは春から夏のこと。なぜこの時季にあぜの話かとお思いでしょうね。
自然農法をしていると、田でミミズを多く見かけます。このミミズを大好物にしているのがモグラです。放っておくと、ミミズを求めて縦横無尽にあぜに穴を開けます。すなわち田の水持ちを悪くします。
そこで登場するのがヒガンバナ。球根に猛毒があり、モグラだけではなく動物は近寄りません。害獣よけになるのです。きれいな花を見終わったら株分けをして、あぜに植えます。
ヒガンバナは球根でしか増えず、動物は食べてくれないので、人間が増やすしかありません。山奥に密かに咲いていたら、その昔、人が住んでいた可能性が高いのです。
江戸時代は飢饉の備えとして増やしたという記録があります。球根にはデンプン質が多く含まれます。毒を抜く方法があるので、最後の最後の食料備蓄だったのですね。
自然の力で、楽しさがあり、しかも役に立つ。ヒガンバナは自然農法と親和性が高い植物なのです。