【小林千寿・碁縁旅人】#14 エビアン=レ=バン

エビアンの源泉「カシャの泉」の前の筆者

水質を守る意思

2018年の秋にジュネーブ囲碁倶楽部(くらぶ)の囲碁指導を終えた後、以前から行きたかった世界中で有名な「エビアン水」で知られるエビアン市で休日をとりました。
その水質は、200年も変わらず水源地のフレンチアルプスから泉のあるエビアンまでの環境保護を厳格に行うこと、すなわち地元の人々の意思で水源を守るために人間の活動を制限、禁止することで守られています。
エビアンはスイスとフランスにまたがるレマン湖畔にあります。スイスのジュネーブから車で約1時間、またはローザンヌからレマン湖を横断する定期船で30分。春から夏のリゾート地で、ゴルフ、カジノなどがあり、長期滞在には素晴らしい環境です。
私がなぜ貴重な自由時間にエビアンを選んだのか。それは一時期、水はエビアン水しか飲めない不思議な経験があったからです。訪ねても、その理由は分かりませんでしたが、今、一番再び行きたいところと即答できる場になりました。
レマン湖畔の散歩、景色の良いホテル、そして、これほど美味(おい)しいチーズがあるのかと驚かされたチーズ屋さん。元々、乳製品が大好きでフランスのチーズとパンがあれば幸せですが、そこのチーズを知ってからは、そこのでないと満足できなくなってしまいました。その味を知って幸福なのか、不幸なのか…。
そして、そこで奮発して参加したゴルフでも有名なロイヤル・ホテルの少人数の料理教室も良かったです。トップシェフ自らホテルの庭で育てているハーブを取るところから始まり、季節の4種のキノコを使ったソースを、またデザートはスイーツのシェフが教えてくれました。最後はシェフと生徒が地元ワインを飲みながら歓談。
エビアンの魅力は、最近の自然環境を問うずっと以前から地元の人々に水質保持のための強い意志があったからこそと改めて気づかされました。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)