【記者兼農家のUターンto農】#28 リーフ、今季の収穫終了

「今日で終わり」寂しさ湧く

ジャンパーのジッパーを下ろそうとしたが、指がうまく動かない。10月に入ってからも、しばらく暑い日が続いたが、朝は冷えるようになっていた。リーフレタスの出荷を終えて着替えようとしたとき、手がかじかんでいるのに気づいた。今季初めてだ。
リーフの生育も鈍っていた。日ごと日照時間が短くなる中、先月最後に定植された苗が育ちきると、収穫も最後が見える。手がかじかんで数日後、「今日で終わりにするぞ」。朝、リーフの状態を確認して、父が言った。寂しさが湧いたのは、意外だった。
初出荷から5カ月。だいたい毎日、朝早く畑に出た。雨の日は余計に気力が必要だった。朝焼けが鮮やかな日は、得した気分になった。久しぶりに会った同年代の友人に「夜明けの空が面白い」と話すと、「そういう感じなんだ」と別世界を見る表情だった。
感性が老成したのかはともかく、天候にも敏感になった。春の訪れ、梅雨、夏の暑さ、そして異常気象…。それによって、リーフの生育が大きく変わった。Uターン前、年に1、2度手伝うくらいの時は、工業製品のように管理された生育をイメージしていた。
出荷値も大きく変わることを知った。得てして、出来が良いと市場全体の出荷量が多くなって安値になり、悪いと品薄で高値になる。理不尽ではあるが、どう対応するかに面白さも感じた。
ただ、栽培に詳しくなった感じはしない。リーフが育つ過程は見たが、どう育てるかは「木を見て森を見ず」。種まきはしたが温度管理はせず、定植しても水やりは関わっていない。農薬のことも分からずじまいだ。
収穫が終わった後の食卓で、「今年はどうだった?」と父に聞いた。答えは、総括を一足飛びに「来年も同じくらい作るってもんだな」。私は、今年より「見る」機会を多くつくりたい。