【像えとせとら】松本市波田保健福祉センター 明日へ(同市波田)

少女の挑戦希望や夢に向かい

施設の中庭にある少女のブロンズ像。宙に浮いた姿を表現するため、台座から伸びたステンレス製の支柱で支えているのがユニークだ。右手で棒をつかんでいるのは、説明書きによると、雲梯(うんてい)を渡っているのだという。
宙に浮いていることもあり、その躍動感は圧倒的だ。勢いをつけて次の棒へ渡ろうとするしなやかな体の動き、先を見つめるまなざしから、彼女の挑戦心がびんびんと伝わる。1本の棒から、その先にあるであろう何本もの棒が目に浮かぶ。目標を一つずつ達成していく、子どもの前向きさが感じ取れる。
像は合併前の波田町時代、施設が完成した1997(平成9)年に設置された。波田在住で小中学校の美術教諭を長年務め、中信美術会、信州美術会の会員でもある清沢龍美さん(68)の作だ。
面白い題材を探し、当時小学生だった娘が公園の雲梯で遊ぶ姿に着想した。「2本抜かし」のイメージで、腰のひねりなど体の動きを細かく捉えて再現したという。「子どもが持つエネルギー、しなやかさ、元気を感じ取り、今回のコロナ禍も乗り切ってほしい」と清沢さん。
少女がつかむ棒は、何本先がゴールか見えない。希望や夢は、簡単につかめないかもしれない。「途中で落ちてもいいじゃん。何度でも挑戦すれば」。そんな声が聞こえた気がして、像に背中を押された。