【記者兼農家のUターンto農】#29 衆院選の1票

響く争点が変わった

「初めての1票」をどうするか。塩尻市民となって最初に迎える選挙が、この衆院選になった。そもそも成人してからずっと県外だ。選挙報道で、前とは違うポイントに注目する自分に気づいた。
これまで、選ぶ基準は政党や立候補者の政治スタイルが割合に重かった。政治手法、人権感覚、政治とカネの問題とか。
今回もそこへの関心は変わらないが、前より気になるのは、経済だ。コロナ禍に転職活動を経験し、Uターンして周りががらりと変わった。農家となり、農産物の市況や景気が今まで以上に生活に直結し、その行方に敏感になった。この環境、信州や塩尻はどうなっていくんだろう。
「分配」が今回の選挙のキーワードになっている。所得格差をどうするかという論点で語られることが多い。以前の私なら、ふむふむと議論を追うだけだったが、今は少し物足りない。地域の格差、地方への分配についてもっと聞きたい、と。地方創生という言葉は、いつの間にか影が薄くなっていないか。
日本農業新聞を読んでいたら、社会学者の宮台真司・東京都立大教授の言葉が目に留まった。「民と『同じ世界』にいると思える政治家を選ぶのが大切だ」
私はUターンして、自分のこととして響く争点が変わった。選挙で、自分の「世界」が変わったことをより自覚しているのかもしれない。何と言っても農業の存在が大きくなった。そこで重なる部分があるのは誰か、どの政党か。その見極めが、私にとって衆院選の大きなテーマになる。
折よく、愛聴しているポッドキャストの番組「ノウカノタネ」が公約特集を配信した。各党の農業政策を比べていて、分かりやすかった。出演者は「農家じゃなくても、農業についてどんな投票をするのか意識できる」と語っている。自分の世界の片隅に農業が少しでもある人は、参考にどうぞ。