大町 地域包み込む綿花 見守り支え合う芽

しあわせの種プロジェクト
綿づくり通じて人つながる

種をまき育てる、花を愛(め)でる、各所の綿の木を見て歩く、収穫した綿でものづくりを楽しむ─。大町市では、綿花を通じて地域の人のつながりが生まれ、見守りや支え合いの種が芽を出している。
綿を育てて安心して暮らせる地域づくりを進めようと、住民の話し合いから生まれ、2019年に始まった「しあわせの種プロジェクト」。賛同者は年々増え、個人宅や畑だけでなく、学校、公共施設駐車場の花壇、商店街でも綿の木を見かけるようになった。
各所で育つ綿を見て歩く「ことことコットンウォーキング」、綿を使ったものづくりや情報交換の場「コットンサロン」なども開かれ、綿を基軸に人が集い会話が弾む。ふわふわとやさしく地域を包み込む綿が紡ぐ人の縁を見た。

栽培きっかけに近所で感動共有

「しあわせの種プロジェクト」は、栽培、ウオーキング、ものづくりなど一連の循環の中で興味がある内容やタイミングで自由に参加できるのが特徴だ。希望者には春先に綿の種を配っている。
今溝三千子さん(78、大町市大町)は初年から綿を育て、会長を務める「十日町小地域福祉ネットワークつくしの会」でも今年から栽培に取り組む。会で種をまいた花壇は通学路に面していて子どもたちの興味も引き、わざわざ見学に来る人もいるという。
花壇の準備や水やり、草取りなどを一緒にするうちに、近所同士で共通の話題が生まれた。芽が出た、花が咲いたといった喜びや感動も共有する。今溝さんは「綿づくりを通じて携わってくれる人の人柄が深く見えた。いざという時に協力してくれる人が見つかり、支え合いのネットワーク作りにもつながる」と話す。

地域の再発見や健康づくりにも

9、10月に実施した「ことことコットンウォーキング」。プロジェクトの賛同者が「ことことコットン」と記した旗を手に先導し、参加者が続く。目的地は綿花畑。約1時間かけて市内各地区に点在する畑や花壇などを訪れ、花や実を楽しみながら健康づくりや地域の良さの再発見、人との交流も目指す。
今年は全5回で、10月8日の回には約25人が参加した。各所の生育状況を観察して栽培の参考にする人、木についた「コットンボール」を見て「もう少しで、はじけそうだね」とわくわくした表情で眺める人も。小学生が育てている綿の木も見学、心地よい秋風の中で会話が弾んだ。
「コットンサロン」は、毎週火曜午後1~3時に市総合福祉センターで開催。賛同者が育て届けられた綿で小物を作ったり、綿に関する情報を交換したりする「地域の居場所」だ。参加者同士で得意なものを教え合うこともあり、保存前の綿花のごみの除去や種取り作業などにボランティアで携わる人もいる。
昨年からサロンに参加し、綿も育てる同市の女性(69)は「外に出るきっかけになり、フレイル予防にも。こうした身近な憩いの場は大切だと感じる」。

プロジェクトは3年目。事務局の市社会福祉協議会によると、声掛けや人づてで、栽培者は初年よりも大幅に増えた。「コロナ禍だが、いろんな人が関わり元気が生まれ、広がっている。綿の力を実感する」と担当者。
取材で話を聞いた人のほとんどが綿栽培は今回が初めて。興味を持ち、手探りで育てている様子をどの人もうれしそうに語ってくれた。「なんとも淡い、優しい色だねえ」。ある男性が綿の花を前に見せた柔和な表情が印象的だった。地域の人の愛情を栄養に育った綿は、これからも多くの人をつないでいく。