【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#16 土を良くする

土を良くする。自然農法界隈では、よく聞くフレーズです。農業はこれに尽きるとまで言われます。
自然農法を志した時、大きな原則として無農薬、無施肥、除草剤不使用、不耕起栽培、自家採種と習いました。不耕起?そうです、畑作では耕さないんです。では、どうやって土を良くするのでしょうか。
コロナ禍をきっかけに地方移住する人が増えていると聞きます。自給自足も目指して農地を借りると、さまざまな理由で耕作放棄地になった土地であることが多いと思います。
こうした土地はトラクターで雑草を土とかき回してきれいにする場合が多いのですが、これが厄介。地上はふかふかに見えても、地下数十センチのところではトラクターの重みで耕盤層という固い地層ができてしまいます。これは水田だと水持ちの強い味方にもなるのですが、畑ではむしろ厄介者。定植した作物の根がこの層を突破できず、不作に終わります。
私の畑も、義父の時代のトラクターのためか、1年目は全く収穫できませんでした。自然農では植物の力を借ります。小太郎流はライ麦(イネ科)とヘアリーベッチ(マメ科)の混植。イネ科の植物は深く根を張るため、ドリルのように耕盤層を突き抜け、崩します。マメ科の植物は根にある根粒菌に窒素をためて、土の中の養分を豊かにしてくれます。
次の年からやせた土地でも作りやすい作物を栽培していきます。マメ科の大豆にすれば、どんどん土が良くなります。すぐに結果を求めずに1年遠回りをすることで良い畑になる。何か他のことにも通じるようですね。
ヘアリーベッチはかれんな花を楽しめますし、季節になるとミツバチが採蜜に来ます。養蜂もしている農家にとっては「一石三鳥」。