【記者兼農家のUターンto農】#30 もみ殻くん炭

農業に地球環境保全に一役

山盛りのもみ殻に差した煙突から、もくもくと煙が立ち上る。この時季の田畑で見られる風景だ。10月27日の本紙では、丸山祥司カメラマンが北アルプスを背景にスケッチしていた。確かに、懐かしさを感じる。
野焼きは2000年の廃棄物処理法改正で禁止されたが、くん炭作りは農地管理などの例外事項に含まれている。ただ、農地周辺の宅地化が進むと、文字通り煙たがられかねない。実家ではいつからかドラム缶を使っている。農業雑誌で仕入れた方法らしい。風の影響を受けずに済む。
そもそも何をしているのかというと、もみ殻の炭化だ。じっくりと焦がし、1日がかりで白茶けたもみ殻が黒くサラサラに。「くん炭」の出来上がりだ。
何に使うのか。実家では、田んぼの排水性を高めるのに利用している。保温性などを生かすため、苗床に混ぜ込むことは祖父もしていた。
うちはしないが、田畑にもまくのも一般的だ。微生物の繁殖を助けたり、土の酸性を中和したりする効果があるという。「土壌改良材」という立派な商品で流通している。
自分で作る分には、材料費はほとんどかからない。ライスセンターからもらってくる。センターで出る大量のもみ殻は、畜産で床材や餌に使われたり、圧縮して固形燃料になったり。くん炭もリサイクル活動とも言える。
近年、さらに一ひねり加わった。地球温暖化だ。くん炭にする過程である程度の二酸化炭素は出るものの一定量の炭素は個体のまま残るので、農地にまくなどして地中に長くとどめることで温室効果ガスの排出削減につながる。炭にはそんな役割があるという。竹炭などを含めた「バイオ炭」という言葉も生まれている。
稲作の恵みを、排水に、土壌づくりに、地球環境保全に、余すところなく使える。そう思うと、煙たなびくもみ殻の山に、懐かしさとともに、尊さも感じる。