【ビジネスの明日】#30 Takaraproject社長 宮嶋由理さん

経営の多角化に活路見いだす

自身の店、スナック「Lover(ラバー)」を松本市の裏町に出したのが24歳のとき。以後、経営に多少の浮き沈みはあったものの、この約2年間のコロナ禍の打撃は「前代未聞だった」といい、特に接待などを含めた「会社使い」が激減したという。
「アメリカの同時多発テロや東日本大震災の際も影響があったが、今回と比べれば一過性。飲食業が、いかに世間のモードに左右されるかが分かった」と現実を見る。
そこで視野に入れるのが経営の多角化だ。タイから昆虫で作った食品を輸入販売している同市内の会社と業務提携。昆虫食材を使った独自のレトルトカレーを考案し、販売する。
将来的には、運営する居酒屋「お野菜居酒屋旬彩心粋(しゅんさいこいき)」で使う食材の仕入れで付き合いのある契約農家の農産物に付加価値を付け、国内外に流通させることも目標に置いている。
「昆虫食は体にいいことは分かっていて、低コストで商品化もできる。農産物の流通は、普段、店で使っている食材のおいしさを多くの人に知ってもらいたいから」と力を込める。

群馬県の高校を卒業後、社会人となり、21歳のときに母親の実家のある松本市に移住。飲食店で働き始め、24歳で独立した。
20年以上、「松本の夜の明かり」をともし続け、得た財産は「お客との出会い」。カウンター越しの会話を通じてお客から人生の生き方や、ビジネスのヒントなどをもらうこともしばしば。
そして何より、お客との間に築いた信頼関係は、今回のコロナ禍でも「店閉めるなよ」「今度行くから」などの励ましの言葉となり、店を続ける原動力になったという。
「お客さんや従業員などたくさんの人に支えられてここまできた」としみじみ語り、「コロナで自分も含め、苦しんでいる人たちのために『何かできたか』と言われたら何もできなかった。いざというときに力になれる会社にしたい」と前を向く。

【プロフィル】
みやじま・ゆり 1974年、群馬県出身。98年にスナック「Lover」、2012年に居酒屋「お野菜居酒屋旬彩心粋」オープン。16年にTakaraprojectを設立し、社長就任。松本市高宮中在住。