製品染めで革に命吹き込む 熊藤大地さん

「革は自分の人生そのもの」

「命を失った動物が、バッグなどの形で再びよみがえるのが革製品。その素材そのものが大好きなんです」
畳1畳ほどの、なめされた子牛1頭分の革(カーフ)を手でなでながら話すのは今年、革製品ブランド「ISTINTO(イスティント)」を立ち上げた安曇野市豊科の熊藤大地さん(31)だ。
熊藤さんは「全国でも数人しかいない」とされる、製品の形を完成させてから色を染める「製品染め」の技術を持つ。新品でも何年も使い込まれたような風合いが製品に出るのが魅力で、革に再び命が吹き込まれたよう。
革に魅せられた男を開いたばかりの新工房に訪ねた。

表情が際立つ「工業製品」を

革製品の職人で、デザイナーでもある熊藤大地さん。安曇野市豊科に今月開いた工房に入ると、革を縫製するミシンなどと一緒に「製品染め」の技法で仕上げたバッグ、財布、ベルト、小物などが並ぶ。
製品染めは、なめし革で製品の形をほとんど完成させてから一定の温度に保たれた染料に1時間ほど漬け、手でもむなどして色を染める技法。革の芯まで染められ、使い込むと、つやが出たり色が深みを増したりするなど経年変化が楽しめる。色落ちせずに、同じ色に染めるには高い技術と知識が必要。このため、この技法を駆使できる職人は全国でもわずかという。
熊藤さんが製品を作る際に心掛けるのは、「一点物」を作るのではなく、手仕事の「工業製品」を作る。「製品の個体差を限りなくなくしたときのみ、革の表情の違いが出る」という強い信念を持って繊細な製品染めに挑むのは、確固たる技術に裏付けされた自信があるからだ。

革工芸独学し製品染め確立

埼玉県出身。10歳で父の実家のある安曇野市に移住してきた。子どもの頃から両親の革製品の匂いなどに興味を持ち、「一度死んだ命がよみがえる」という感覚を持った。
松本第一高校に進み金属工芸と陶芸を学ぶ一方で、革から離れられず、卒業後は独自で革工芸を学んだ。2012年、知り合いの紹介で、製品染めに挑戦し始めた岡山県玉野市の革製品ブランド「MARVELETS(マーヴェレッツ)」のオーナー満田秀二さんに師事。約3年かけ2人で製品染めの独自技術を確立した。
15年に安曇野に戻り、独立のための資金をためるのと同時に、アパレルブランドから革製品の製作依頼も受けた。
ブランド名「ISTINTO」は、「本能」を意味するイタリア語。「自分の本能が、こういう製品を『作りたい』と思わなければ、いいものはできない」と熊藤さん。商品は受注生産で、販路はインスタグラムを使って、全国のセレクトショップなどへの拡大を目指す。
「革は自分の人生そのもの。その素晴らしさを、どんどん伝えていきたい」。職人の目が光った。

【インフォメーション】
【展示&受注会】28日まで安曇野市豊科のカフェ「BELL WOOD COFFEE LAB(ベル・ウッド・コーヒー・ラボ)」で開催中。熊藤さんの製品9型(バッグ4、財布3、小物2型)を展示し、注文を受け付ける。同店オーナーでプリンティングディレクターの鈴木利行さんが約半年間、熊藤さんの工房で撮影した写真23点も展示する。19日午後7~8時半、熊藤さんと鈴木さんのトークショー。同店TEL0263・75・3319