「ヘアドネーション」に協力

小林杏由美さん 8年伸ばした髪に思いは

病気や事故などで頭髪を失った子どもたちに医療用ウイッグ(かつら)を贈るための髪の寄付「ヘアドネーション」。その活動に関心を持ち、自ら髪を提供したいという子どもたちが増えており、豊科南小学校6年の小林杏由美(あゆみ)さん(12、安曇野市豊科高家)もその一人です。8年伸ばした髪を切る場を取材し、話を聞きました。

闘病中の子にも髪でおしゃれを

美容室「Apalie(アパリエ)」(松本市里山辺)で10月23日に行われた「断髪式」。家族や友人が見守る中、尻の下まで100センチも伸びた髪に美容師の羽部睦枝さんがはさみを入れました。
毛先の手入れ以外でカットしてもらうのは初めてという杏由美さん。ヘアドネーションの主催団体で異なりますが、寄付する一つの基準は長さが31センチ以上であること。今回は約60センチ提供しました。肩ほどになった髪をなでた杏由美さんは「髪がないみたい!」。
きっかけは幼稚園の年中のとき。ニュース番組でウイッグを付けて笑顔になっている女の子を見た母・めぐみさんからの勧めでした。
「あの頃はヘアドネーションがあまり認知されてなく、私もテレビで初めて知りました。杏由美は自分で髪を結ったり子ども用のメークでおしゃれをしたりするのが好きだったので、病気と闘っている子どもたちも同じように髪でおしゃれができたらいい、髪が誰かの笑顔につながるといいと思い『伸ばしてみようか』と言いました」
幼かったのでその時のやりとりはよく覚えていないと言う杏由美さんですが、はっきりと意識したのは4年生の頃。知り合いから6年生の女の子が髪を寄付したと聞き、「自分以外にも同じような子が身近にいるんだ」と勇気づけられました。

浦安の舞の舞台地毛で上がる夢

杏由美さんが髪を伸ばしてきたのは、もう一つかなえたい夢があったからです。それは地元の真々部地区の秋祭りで毎年6年生の女の子が奉納する「浦安の舞」に、付け毛ではなく地毛を結って舞台に上がること。ずっと憧れていました。
とはいえ髪の手入れをはじめ日常生活で不便を感じることも多々あります。「髪がすぐに絡まるのでリンスをしながらくしでとかす。泡をしっかり洗い流すのにも髪を乾かすのにも時間がかかる。座るときにうっかりお尻で踏んでしまったり、トイレで汚さないよう気を付けたり。暑い夏は髪が邪魔で切ってしまいたくなりました」。維持するのは大変だったと言います。
そんな杏由美さんを見ていた3年生の妹・結菜(ゆな)さん(9)も、物心ついたころから髪を伸ばし始めます。そこで母娘で交わした約束は「自分の髪の毛は自分で管理する」こと。
「大事なのは親に言われたからではなく、自分の意思ですること。自分で髪を洗い、乾かし、縛る。それができないなら切ろう、と話しました」とめぐみさん。杏由美さんは4年生から、風呂場の排水溝にたまった髪の毛の掃除も担当してきました。
コロナ禍で浦安の舞は昨年に続き中止になりましたが、「誰かの笑顔のために」と伸ばしてきた髪の束を手にすることができた杏由美さん。「自分にできることをして、病気と闘っている子どもたちや事故で髪を無くした子どもたちに笑顔になってほしいし、喜んでもらえたらうれしい。31センチくらい(ショート用ウイッグ)ならまた伸ばしてもいいかな」

【メモ】
杏由美さんが髪を寄付したNPO法人「JHD&C」(通称ジャーダック、大阪市)によると、同団体でウイッグの提供を待つ子どもたちは現在約300人。その多くがロングスタイルを希望しているが、そのウイッグを作るのに必要な50センチ以上60センチ未満の髪の寄付は全体の8%、スーパーロングスタイル(60センチ以上)だと同3%という。子どもからの寄付は年々増えており、全体の40%を小中高校生が占める。