【働くママ・パパ】北アの三俣山荘・水晶小屋・伊藤敦子さん

家族みんなで山で過ごす

長野、富山県境にある北アルプス最深部の山小屋「三俣山荘」と、同じ山域の「水晶小屋」を夫の伊藤圭さん(44、安曇野市穂高有明)と経営しながら2人の子育てをする敦子さん(41)。1年の3分の1ほどは家族みんなで山で過ごすという生活や、子どもへの思いを聞きました。

★信州へ
敦子さんは岡山県出身。幼い頃から家族旅行といえば登山というほど山に親しみ、京都の短大を卒業後は、思い入れのあった常念小屋の仕事に就きます。
しかし、さまざまな人と接する中で自分の見識の狭さを痛感。「広い視野を持ちたい」と3カ月半ほどネパール、インド、タイを巡る放浪の旅へ。帰国後、“修業”の場として訪れた雲ノ平山荘で圭さんと出会い、22歳で結婚。黒部川源流域を開拓して登山道を開き、三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋を建てた圭さんの父・故正一さんから、水晶小屋の経営を夫婦で引き継ぎます。
★子どもも小屋生活
29歳の時に弘也さん(12)を出産。2007年に小屋を建て替え、それまで悩みの種だった水事情が良くなったこともあり、生後4カ月だった弘也さんを連れて小屋仕事に復帰します。「スタッフやお客さんがおんぶや抱っこ、散歩に連れ出すなど協力してくれ、両立はそれほど大変とは思いませんでした」
32歳で華也(かや)さん(9)を産んだ時は、産後間もなかったためシーズン中(6~10月)の入山を断念。「実家の両親にいっとき来てもらいましたが、山で弘也を見てもらった時のようにはいかず…。子育てのつらさを痛感しました」
翌シーズンから子どもたちも一緒に山小屋生活を再スタート。学校に通うようになると、行事や習い事のために1カ月ほど山を下り、岡山から駆け付ける敦子さんの両親と生活することもあります。
★山小屋の仕事
掃除、洗濯、炊事、接客、排せつ物の処理、けが人の介助、登山道整備、草刈りなど「公共事業並み」といわれるほど仕事は多岐にわたります。大学生から30代くらいのスタッフは大半が毎年入れ替わり。教えたり指示を出したりしつつ温かい雰囲気で登山客を迎えることは容易ではありませんが、「山小屋はどんな人でも平等に出会える貴重な場所。『山があってこそ』という感謝の気持ちと、スタッフみんなが『大家族』という意識を持つことを大切にしています」。
子どもたちも仕事を受け持ち、中学1年生の弘也さんは受け付け業務、小学3年生の華也さんは菓子作りを担当しています。
登山シーズンが終わった後も会計や来シーズンの予約受け付けへの対応など、シーズン前は買い出しやスケジューリング、スタッフ教育など仕事は山積みです。その中でも少し余裕のある冬は、有明地区で江戸時代から生産されてきた天蚕の糸取りをすることもあります。
★子どもも山で過ごす理由
「子どもが自立するまでの限りある時間を大切にしたいという思いから、子どもを連れて行かない選択肢はありませんでした」。学校生活との両立に難しさを感じながらも、「できるだけ家族一緒に同じことを頑張る体験をさせたい。失敗も経験して成長してほしいと思っています」。「大家族」の存在が大きな支えだといいます。
★圭さんから
「僕が夢ばかり見ているので、現実と子育てを一身に請け負っている妻に感謝。いつもありがとう!これからもよろしく!」