受け継がれる民話「地域の誇りに」
躍動感あふれる竜の、ひげを手綱のようにつかんでまたがる男の子。りりしい表情で遠くの空を見詰め、竜に行き先を指し示しているように見える。民話「泉小太郎」のブロンズ像は、弘法山古墳の麓にある。
竜は小太郎の母で、諏訪大明神の化身ともいう「犀竜(さいりゅう)」。かつて湖だった松本平と安曇野を「陸地にしたら、人々が豊かに暮らせる」と、母子が力を合わせて水をせき止めていた巨大な岩を砕き、水を越後(新潟県)の海へ流して現在の盆地を造ったという。
像は、松本アルプスライオンズクラブ(LC)が創立25周年を記念し、1989(平成元)年に建立した。小太郎が近くの中山・和泉地区で生まれたとされることや、同LCが創立20周年で弘法山に桜を植えたことなどから、この場所に。当時を知る同LC元会長の二木昇さん(84)は「地域の誇りとして、受け継いでもらえれば」。
中山小学校の4年生は毎秋、中山地区の文化祭と同じ日に開かれる「泉小太郎祭り」で、民話を劇や紙芝居で上演してきた。昨年はコロナ禍でできなかったが、今年は12月11日に同校体育館で開く文化祭の代替イベント「中山ライブ」で紙芝居を披露する予定だ。
「小太郎のような、人を思いやる気持ちを持ち、優しい人になってほしい」と建立された像。その願いは今も、地域に伝わり続ける。