「アロハの心」持つ県内一のフラを

歴史や文化大切に後進育成も

ちょうど10年前の2011年12月、静岡県から松本市に移り住んできた。何もせずにのんびりと過ごすつもりだったそのころには、想像もしていなかった毎日を送っている。
現在約70人が在籍するフラの教室「ラウレア・フラ・スタジオ」を主宰し、指導する三上沙代美さん(同市城山)。50年ほど前からカラオケ、新舞踊など数々の分野で講師を務めてきた。
移住後、「これだけの人が何もしないのはもったいない。ぜひ教えて」と頼まれ、12年5月、同市で7人の生徒からスタート。諏訪市、塩尻市、安曇野市でも開講して大所帯になった。
「県内で一番、『アロハの心』を持ったフラと言ってもらえるようになれば」と、後進の育成にも力を注いでいる。

大卒後ハワイへ師範7人に学ぶ

神奈川県生まれの三上沙代美さん。幼いころから三味線、長唄、バレエ、日本舞踊を習い、小学校高学年で新劇女優の東山千栄子の内弟子になり、行儀作法を教わった。高校3年間は、俳優でコメディアンの「エノケン」こと榎本健一が開いた映画演劇研究所の9期生として活動。テレビ番組「エノケン劇場」や新宿コマ劇場「羅生門」、明治座「子連れ狼」などに出演した。
大学進学後は長期休みを利用してハワイへ渡航。まだ日本ではなじみの薄かったフラを学び始めた。ビデオもないため教わりながらメモを取り、ホテルに戻るとすぐに細かい動きをノートに書き留めて習得。クム(師範)によって表現が違うため7人のクムに学び、創作フラも含めて2000曲以上がレパートリーになっている。
他にも、舞踊の花柳流や居合の夢想流の師範、カラオケ講師などの資格も持ち、50年ほど前に横浜松坂屋が始めた文化教室ではさまざまな教室を担当。その傍ら、母親が開いたフランス料理店の看板娘として働いた。その時、ロケ隊の一員として訪れた俳優の真一郎さんに見染められ、結婚した。

生徒と年に1回本格的なショー

結婚後も文化教室の講師やハワイでの修業を続け、17年前には伊豆に移り住んで新たにフラの教室を開いたが「病院が充実している松本に住み、信州ライフを楽しもう」という真一郎さんと共に松本市に移住してきた。教室も始め、今では毎年1回、生徒たちと本格的なフラショーを開いている。
本場で長く修業する沙代美さんは「アロハの心」を大切に指導に立つ。沙代美さんによると、アロハとは「優しさ・調和・思いやり・謙虚・忍耐」などが語源で、「人をうらやまず、卑下しない。悪口を言わない。自分がうまいと思うと、とたんに技量が落ちる」という。
初めて教室に来た人には、フラの歴史やアロハの意味、基本のステップをまとめたノートを渡す。新しい曲に取り組む時にも、曲の歌詞や意味を踏まえた動きも書き添え、この10年間でおよそ200曲に取り組んだ。
経験を踏まえて、ショーの照明や演出などは本格的。一方で、なるべくお金をかけないように―と、シーツで衣装を縫ったり小物を手作りしたり。ハワイで咲いている花を摘んで髪にさすように、真一郎さんとモミジを拾い集めてレイを作ったこともあるという。
「いつも『私たちのため』を心から考え、本場のフラを教えてくれる」と、同スタジオ発足に関わった1人で事務局も務める上條法子さん。後進のインストラクターも育てる三上さんは「一番大切なのはハート。気遣いや心遣いができなければだめ」と、温かくも厳しい目でフラとアロハの心を伝えている。