学生グループ「広津の杜」山間集落で古民家借り交流

“つながり”持つ人増やしたい

山間地の狭い道路をゆっくり走る車に、一人の大学生が声を掛けた。「今日、おやきを焼いたから、持って行きませんか?」。「それは、まあ、ありがとう」。窓を開けた車から、笑顔の女性の声が聞こえた。
そこは池田町広津の古民家の前。大学生は、古民家を借りて週末をメインに山の中の暮らしを楽しむ学生グループ「広津の杜(もり)」(15人)の一員。おやきを受け取ったのは地域住民の一人だ。
この日は、学生たちが広津の杜の支援者を招いて手作りおやきやピザを振る舞い、近くの大峰高原を案内し、落ち葉で工作をして楽しんだ日。地域の人へのおすそ分けはその一環だ。会話の親しげな口調から、学生たちが地元になじんでいる様子が見てとれた。

広津地区に魅力 新たにグループ

「広津の杜」の原点は、2018年に信州大や長野大などの学生有志が池田町を拠点に始めた「池田つむぐプロジェクト」にある。同プロジェクトは、町にある問題点ごとに分かれて活動し、現在も続いている。
中でも、人口75人、世帯数42、約半数が65歳以上(11月1日現在)という広津地区に親しみを感じる学生たちの動きは当初から活発で、訪問ツアーを開いたり地区行事を手伝ったりして、つながりを深めてきた。そうした中から派生してできたのが広津の杜だ。池田つむぐプロジェクトの活動とは別に19年秋に発足した。
現在は代表の絹谷智樹さん(信州大4年)をはじめ、信州大大学院生1人、信州大生6人、長野大生8人。女性8人、男性7人が所属している。絹谷さんは東京出身だが、「ここは自然が豊か。正式な住民になりたいくらい」と、広津の魅力にはまっている。

県内外に支援者 地域でもてなし

20年夏には、広津の住民の一人で学生たちと親しくなった荻窪善明さん(45)所有の空き家が借りられることになった。2000年代まで義明さんの祖父が住んでいたという家で、1階は6部屋、蚕室を改装した2階は2部屋あるが、日用品などの整理はできていなかった。
学生たちは、改装費用や活動費を生み出すために今春、クラウドファンディング(CF)を通じて現在までに県内外から50万円を集めた。片付けは自力で―と、5月に始動した学生たちだが、その後、コロナ禍で集まれる日が少なくなった。
だが、ゆっくりと整理を進め、床下に断熱材を入れるための調査をしたり9月からは庭の草を取ってれんがでピザ窯を造ったり。今回のおやきやピザの振る舞いは、CFへの「お返しイベント」だった。
この日は川崎市から黒澤慶一さん、美菜子さん夫妻と、兵庫県宝塚市から多田祐樹さんが駆け付けた。県内に住む2人を加え、ゲストは5人。「思ったより少ないが、コロナ禍が終わっていないのでしかたがない」と学生たち。
それでも、地域の70代女性2人の助けを得て、参加者におやきの作り方を指導したり出来たてを振る舞ったり。参加者から「美しい自然の中の生活を知ることができて楽しかった」と感謝の言葉を贈られた。
「地域の外に住みながらも、そこを再三訪れて楽しむ人や、ルーツがそこにあり帰省して地域づくりに参加する『つながり(関係)人口』が増えてほしい。学生たちもそれを望んでいる」。グループの立ち上げから知る参加者の一人は、そう話していた。