【記者兼農家のUターンto農】#34 レタスと温暖化㊤

発想にない新たな栽培法へ

11月半ば、地球温暖化対策を話し合う国連の会議が連日ニュースになっていた。海洋の島国は、海面が上がったら存亡の危機だと訴えているという。
何となく縁遠かった話が、いきなり身近に迫ってきた。同12日付信毎の中信版に「迫る温暖化レタスを守れ!」という見出しがあった。実家で作るリーフレタスではなく、葉が丸くまとまる普通のレタスについての記事だが、気になる。
読むと、県野菜花き試験場(塩尻市宗賀)が、温暖化と病害の関連を研究しているとある。葉の表面が腐る「腐敗病」の発生具合を調べるために実験栽培をしたという。改めて、試験場の環境部技師、藤結宇さん(28)に話を聞きに行った。
実験では、ビニールハウスを使って、気温の高い栽培場所と低い場所を作った。水やりも2種類の方法を試した。雨を模してスプリンクラーで上からまく方法と、排水管で土の下で与える方法。気温と水やりをそれぞれ掛け合わせた四つの環境下で、発病状況を調べた。
興味深いのは、結果が予想と少し違ったことだ。藤さんたちは、高温でスプリンクラーを使った場所の発病率が最も高いだろうと考えた。だが実際は、高温でも配水管を使った場所の方が発病しやすい傾向が見られた。
予想は、「葉が腐る病気だから、葉に水が当たる方が出やすいだろう」という素直なもの。それが裏切られたことで、視点は地面の上から下に向かう。土中の水はけがポイントなのではないかと見立て、来年度、実験を深めるという。これまでの発想にない、温暖化対応の栽培法が生まれるかもしれない。
想定と違ったことが起こったときこそ、新たな知見につながる。記者の取材もそうだが、今回、専門家の話を聞いて、農業もそうなんだと改めて気づかされた思いがする。
そういえば、新しもの好きな父はどうなのか。うちのリーフに温暖化はどう関わっているのだろう?