【像えとせとら】県林業総合センター 連峰(塩尻市片丘)

右?左? 不思議で楽しい物体

森林学習展示館前の木々の間にたたずむ銀色の物体。磨き上がった表面に景色が映り込み、周囲に溶け込んでいる。自分も入り込んでみたくなる。鏡面は凹凸があって、映る姿は太ったり、やせたり。
ふと、左右がおかしいことに気づく。左手を挙げると、鏡の中の自分も左手を挙げている=写真。鏡の中の世界は普通、左右が反転して見えるはずなのに。
展示館の体験教室に来る子どもたちには、格好の遊び相手だ。「最初は左右に迷って困ってます」と職員の竹内嘉江さん(63)は笑う。不思議で楽しい。この物体、面構えは武骨だが、遊び心のあるヤツなのだ。
作者の山本成男さん(68)は東京芸大で彫刻を学び、田島順三製作所(現・三和タジマ、東京)に入社。ステンレス造形を多く手掛け、県林業総合センターが1988年に現在地に移転した時、このモニュメントをデザインした。
林という設置場所がポイントだったという。「難しいが、特殊な空間を生かそうと。ステンレスの表面を曲げて、映り込む景色に変化を持たせることを考えた」。鏡面を組み合わせ、左右逆の映り方もつくり出した。
作品は今もきれいだと伝えると、山本さんは驚いていた。竹内さんら職員が定期的に布で拭き、30年以上輝き続ける作品を、今の子どもが面白がっている。「感動しますね」と山本さんは話した。