おかえり想い出の樹プロジェクト 伐採した木を思い出に残す

愛された木をボールペンに 

野生鳥獣の餌になる栗や柿。やむなく伐採を決めたが、所有者にとって思い出がある大切な木をクラフト作品にして残そう-と、安曇野市のボランティアグループ「あづみの樹(き)楽(らく)会」が、「おかえり想(おも)い出の樹プロジェクト」(仮称)と銘打った取り組みを始めた。
第1弾は楽器製造の「アルタス」(同市堀金烏川)の敷地内にあった栗の木。猿害に悩んでいたが、今年6月に伐採。業者に依頼して、その木材を使ってボールペンを作り、同社に贈った。
同会は、ふるさと納税の返礼品としての利用を市に提案し、採択されるなど、地域貢献につながる活動に広がっている。「世界に1本しかない木の思い出を、形にしてお返しする」ユニークな取り組みを追った。

アルタスの敷地内にあった栗の木は樹齢約60年と約30年の2本。猿が落ちた実を食べに来ていた。創業期からある木で、従業員の家族が栗拾いに来たり、拾った栗でスイーツを作ったり。社の景観の一部だったというが、6月に伐採した。
その木が2本のボールペンに生まれ変わって同社に帰ってきた。あづみの樹楽会が、木製のペンや器などを作っている「みさやまウッドワークス」(上田市)に製作を依頼。手にした同社の吉田順専務(53)は「木や建物はなくなると忘れてしまいがちだが、ボールペンとして生かせれば思い出せる。もったいなくて使えない」と話す。
あづみの樹楽会は、市里山再生計画「さとぷろ。」のボランティアグループの一つ。里山整備で伐採した木からまきを生産し利用、余剰分は市民に安く販売するなどの活動を続ける。6月からは、鳥獣被害(猿害)対策として、餌となる栗や柿の木を実費で伐採する取り組みを始めた。
安曇野市豊科の個人宅の栗の木を伐採した際、家人から「(この木から採れた栗で)栗ご飯を炊いた」「家族で栗拾いをした」などの思い出話を聞いた。「燃やしたらなくなってしまうまき以外に、何かの形で伐採した木を生かせないか、以前から考えていた」と、同会事務局の別府弘祥さん(66、同市堀金烏川)。思い出話がヒントになった。
きちんとした物にするには、その道の人に依頼するほかない。製作費用は伐採の実費から捻出した。渡辺晃会長(74、同市穂高)は「小さくても思い出は残る。適当な大きさのものなら歓迎されるのでは」と話す。

ふるさと納税返礼品に採用

栗の木のボールペンは「栗っこペン」(仮称)、桜の木は「桜っこペン」(同)とし、ふるさと納税の返礼品として採用が決定。それが税収増につながり、さらに「さとぷろ。」活動の一助にもなれば-と期待する。
伐採した木を乾燥させ、ボールペンなどに加工するため、手元に戻るまで6カ月ほどかかるという。同じ木から作ったボールペンでも、色が違ったり、木目が違ったり。いずれもこの世にたった一つの品だ。作品に詰まった思い出もさまざま。そこから生まれるクラフト作品は、元の木を愛した人たちにとって貴重な宝物になることだろう。
問い合わせはメール(kiraku@plala.to)、活動の様子は同会のフェイスブックで。