塩尻市のデジタル事業 官民連携で進むバス自動運転化

「地産地消型DX」へ試み

塩尻市のJR広丘駅を、小型バスがゆっくりと発車した。運転手はいるが、必要な時以外はハンドルに手はかけない。11月に行われたEV(電気自動車)バスによる自動運転の実証実験だ。
交通部門のDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術を生かした変革)に向けた取り組みを進めている同市。今年は自動運転EVバスのほか、10月からAI活用型オンデマンド(必要に応じて予約・利用ができる)バスの実証実験も実施している。
持続可能な新しい公共交通システムの構築が求められる中、官民連携で進むプロジェクトの現場を取材した。

塩尻市の自動運転実証実験は今年で2年目。今回はEVバスを使って11月24日から5日間行い、JR広丘駅と国道19号沿いの商業施設を結ぶ約3・8キロで1日6便を運行、188人の市民が「乗客」として搭乗した。
時速は最大19キロ。ドライバーの運転を支援する範囲内で、加速・制動やハンドル操作が自動化された「自動運転レベル2」での走行だ。15台のカメラやセンサーが周囲の状況を感知し、あらかじめ設定された地図情報と合わせて自身の位置や障害物を判断、運転を制御する。

デジタル技術を公共交通に生かし効率的な移動を実現させる移動支援サービス「MaaS(マース)=MobilityasaService」。スマートフォンがあれば、住民や旅行者の個別ニーズに沿って複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済が一括でできるようになる。都市部では渋滞緩和、地方では交通手段の維持確保につながると期待されている。
現状のコミュニティーバスの運転手不足と利用率低下に悩む塩尻市にとっても、交通弱者の生活を守る持続可能な公共交通の再構築は喫緊の課題だ。そこで「塩尻MaaS」として、市街地と集落間は定期運行の自動運転バス、市街地内はオンデマンドバスに転換できないか-と昨年度から実験を進めている。
市民が乗りたい時にアプリや電話で予約して配車するオンデマンドバスは「のるーと塩尻」と名付け、実証運行。本年度は中心市街地循環線エリアで実施し、大幅に利用を伸ばしている。5年間で6エリアでの実験を予定しており、利用実績や利便性などを踏まえて適切な運行方法を決めていく方針だ。

同市では、市振興公社が2010年、自営型テレワーク推進事業「KADO(カドウ)」を立ち上げた。パソコンを使ってできるデータ管理やウェブ制作など業務を公社が受注、能力や希望に応じて仕事を割り振っている。現在、子育てや介護と仕事を両立させたい母親など、時短勤務を希望する約250人が稼働している。
当初は思うような受注が取れなかったが、16年にアノテーション業務(AIや機械学習の判断の基となるデータ作成業務)を受注。17年からは自動運転用3次元地図の作成業務を受注したことで、急速に事業が広がった。こうしてデジタル関連企業と縁ができ、自動運転やMaaSへの取り組みが加速した。
「KADOとMaaSが同じスピードで成長していけば、相乗効果が生まれ、より市民のニーズに近いサービスを安価で提供していける」と、市官民連携推進課の太田幸一課長補佐。同市の取り組みが、公共交通維持だけでなく地方の「地産地消型DX」につながるか、注目されている。