【記者兼農家のUターンto農】#35 レタスと温暖化㊦

研究者が探る「微気象」の世界

「温暖化の影響?雨不足くれえかなあ」。父は答えを探しあぐねたようだった。
県野菜花き試験場(塩尻市宗賀)で地球温暖化とレタスの病害の関連を研究しているという話を聞き、実家のリーフレタスが気になった。だが、父はあまりピンとこないよう。収穫はとうに終え、寒さ増す頃だから無理もないかもしれない。前回取り上げた腐敗病も、悩まされた記憶はないそうだ。
試験場の技師、藤結宇さん(28)も腐敗病によるリーフの被害例をすぐには挙げられないようだった。葉が丸まる結球性のレタスに目立つ病気だという。
藤さんに「微気象」という言葉を教わった。ごく小さな空間の気象という意味合いだ。腐敗病の研究では、レタスの株周りの湿度という微気象が問題だった。温暖化という超メガ級の気象と、地球からすると点のようなミクロな気象のつながりを調べようということか。
病気以外で温暖化でレタスが受ける影響はありますか?藤さんにむちゃぶりすると、「ゲリラ豪雨ですかね」と答えてくれた。「それならうちも」と、7月の豪雨を思い出した。メガ気象が微気象を有無を言わせず打ち壊すイメージ。当面、試験場の対象にはなりそうもない。
他方で、腐敗病を含む細菌性の病気が南佐久などで増えているとの情報はあるという。温暖化の影響なのかは分からない。
藤さんが断定的な物言いをしないのはいかにも研究者らしいが、腐敗病の実験栽培が予想と違った結果をもたらしたように、実際、温暖化とレタスとの関連は分からないことが多いのだろう。リーフも無関係ではないということだ。
試験場が温暖化に取り組み始めたのは、「やがて長野でレタスは作れなくなる」という過剰な危機感に対応する事情があったという。まだ分からないことは多い。何しろメガとミクロだ。農家には五里霧中と言える、その間を探求し続ける人たちがいる。心強い。