「学習障害」原因や対処法は 信大・本田教授に聞く

小学生になっても漢字が覚えられない、黒板の文字を写すのが遅い、計算ができないといった悩みを聞くことがあります。その中には「学習障害」が含まれている可能性があります。努力が足りない、もっと頑張れという前に、原因や対処法を考えてみませんか。信州大医学部(松本市)子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授に話を聞きました。

「勉強が苦手」理由は?

★学習障害とは
「勉強が苦手」にはいろいろな理由があります。最初に考えるのは知的障害です。知的障害がないのに苦手なとき、一番可能性が高いものとして学習障害が考えられます。
人間にはさまざまな能力があり、得意不得意があります。文系理系などもそうです。それと同じように、読みだけが苦手とか計算だけが苦手、学校で習う教科学習の一部が苦手という子がいます。
例えば理解力もあって耳から聞けば分かるのに、文字が読めないだけの理由で分からないとしたら、教科書を読むよりテレビなどを見て、耳から学ぶことで知識が入ります。
今の学校は教科書を読ませ、書かせて文字を学習することを土台にしています。それが成り立たないと、その先の勉強ができない構図になっているのです。読み書きだけができない子どもは、そのことが足かせになって勉強が進まないという場合があります。
★学習障害の原因
まだ分かっていませんが、生まれ育った家庭や環境、家でのしつけや育て方が原因ではありません。今は子育て全般において早期の英才教育を良しとする風潮があるので、保護者は標準をノルマにして焦っている方が多いように思います。
本当なら今、身に付きそうにないことは後回しにしてもいいし、一人一人に合わせたオーダーメードの育て方をもっと普及させた方がいいと思います。
少し前に私たちの教室で、子育ての悩みへの向き合い方を専門家が解説するスマートフォンアプリ「TOIRO(トイロ)」を作りました。主に未就学児から小学校低学年の悩みに対する回答ですが、年齢にとらわれたり、他の子と比べたりしないような接し方を普及させたいです。

特性に合った学習法を

★学習障害の子が学習に取り組むとき
学校の先生に相談しながら、その子の特性に合わせた方法を考えていく必要があります。
漢字が書けない子に大量の書き取りをさせたり、計算が苦手な子に計算ドリルを繰り返しやらせるというやり方では、自信をなくしその教科が嫌いになってしまいます。
そうではなく、苦手な部分に対して学習補助具を使ってサポートするという手段もあります。計算が苦手だったら電卓を使う、板書をカメラで写す、教科書をタブレットに取り込んで音声化するアプリを使うなどです。これらは「合理的配慮」といって法律で義務づけられています。
このような学習補助具を使うことで「ずるい」と言われたらどうしようという声を聞きますが、近視の人が眼鏡をかけるのと一緒だと考えてください。眼鏡を使う人に「ずるい」という声が上がらないのは自分が困ってないからで、もし皆が困っているなら全員が使っていますよね。
合理的配慮は、医療機関の診断書がなくても受けられます。学校で合理的配慮を受ける際に「個別支援計画」を作成し、それを小中高と引き継いでいくとよいでしょう。個別支援計画を作成して合理的配慮の実績をつくると大学受験でも配慮されます(文字を読んで設問を解くことがハンディキャップになる場合は設問を音声にしてもらうなど)。
今のところ、受験で合理的配慮を受けるためには、医療機関の診断書が必要となります。県内では高校入試でも配慮されるように取り組んでいるところです。
子どもの学習に不安がある場合は、問題の根底にある原因を突き止める必要があります。担任や支援の先生に様子を聞き、小児科医または児童精神科医に相談してみてください。

インフォメーション
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