松本出身の塩原さん ただ一人の表情撮り続け

ヌード撮影は相手を知る過程

「人間の奥深さを探っていく延長線上にあるのがヌード」
そう語るのは、松本市島立出身の写真家、塩原洋さん(38、東京都)。「男性のいやらしい目線で撮ったヌード写真と、モデルの表現として撮ったそれは異質なもの」とも。
塩原さんは、雑誌のグラビアや女優、アイドルの写真集などを手掛ける一方で、プロになる前の約7年前から現在まで、ライフワークとしてたった一人のヌードモデルを撮り続けてきた。写真集も2冊、出版した。
その2冊に収められた作品の初の展示会が31日まで、安曇野市豊科のカフェ「BELL WOOD COFFEE LAB」で開かれている。20代のモデルが塩原さんの前でしか見せない「素」の表情は、見る人によってさまざまな「美」を感じさせてくれる。

撮影し続けたい被写体に会えた

塩原洋さんが、ライフワークとして2014年から撮り続けているのは、兎丸愛美さん(29)。14年にヌードモデルとしてデビューし、17年にファースト写真集を発売した。
16年からは女優としても活動。映画「シスターフッド」「海辺の途中」などにも出演した。最近ではアジア9カ国の俳優が参加し、11月に劇場公開された「COME&GO(カム・アンド・ゴー)」で、田舎から都会に出できた「貧困女子役」を好演している。
「『撮りたい』という欲求を保ち続けられる、まれな被写体。出会えたことを幸せに思う」と兎丸さんにほれ込んでいる塩原さん。兎丸さんは「洋さんは私の全てを知っている。妊娠や出産など、これからも何かの機会があるたびに撮ってもらいたい」と信頼を寄せている。
写真集「きっとぜんぶ大丈夫になる」(17年、玄光社)、「しあわせのにおいがする」(20年、同)には、兎丸さんの喜怒哀楽が表れた「素」の表情が満載。何げない日常の一こまを記録した作品には、緑豊かな自然をバックに全裸の兎丸さんが凜(りん)として立つ作品などもある。塩原さんは「ここに写っているのは動物と植物の命の風景」と解説する。

今の故郷に興味 いつかは作品を

塩原さんは松本蟻ケ崎高校から立教大学社会学部に進んだ。大学2年時、一眼レフカメラに興味を持ち、写真家の荒木経惟(のぶよし)さん(81)、後に師事する沢渡朔(はじめ)さん(同)の写真集を見て「知的好奇心をかき立てられた」と写真の道を志した。
大学卒業後、都内の写真スタジオで約2年働いた後、09年に沢渡さんの元へ。15年にプロとして独立した。
これまで多くの女性モデルと向き合ってきた。ヌード撮影については、親戚の男性から「うらやましい」と言われたこともあるが、塩原さんは「人間に興味があり、その人を深く知りたい。その過程にヌードもある」と話す。「他の人には絶対に見せない表情を写真を通して見られる。これ以上の幸せはない」と写真家としての誇りを見せる。
コロナ禍もあり、久しぶりとなった帰省の際、以前は「全く興味がなかった」という、こけむした道祖神や耕作放棄地となった田畑など、「今の故郷」に自然と目が向いた。
「いつかはこの松本平をテーマにした作品をつくってみたいですね」。塩原さんはそう言って前を向いた。
展示会は午前10時~午後6時。月、火曜定休。BELL WOOD COFFEE LAB TEL0263・75・3319