元診察室のカフェ 遊び心ある空間に

愛着ある建物を憩いの場に

外壁の曲線やタイルが目を引くレトロな建物。ガラス扉を開け、スリッパに履き替えて待合室を抜けると、不思議な造りのカフェが現れた。
建物は元医院、カフェ室内は元診察室を活用。室内にはジャズが流れ、コーヒーの香りが立ち上る。棚には古い医療器具、テーブルには医療用の瓶やシャーレに入った砂糖、クリームも。
「お堀と青木カフェ」(松本市城東2)。松本城の総堀沿い、通称「医院通り」で100年以上続いた青木医院が10年ほど前に閉院。今秋、喫茶店として生まれ変わった。
「歴史ある建物や医療器具など、古いものを生かして、地域の人の憩いの場に」という思いとアイデアが詰まったユニークな空間をのぞいてみた。

薬棚に医療器具 卓上にシャーレ

「お堀と青木カフェ」。昭和の貴重な建築物であるかつての医院の診察室をカフェにし、備品をなるべく生かして当時の面影を残した。長年使った薬棚には古い医療器具が飾られ、卓上の砂糖やスプーン入れには、医療用の瓶やシャーレを使う遊び心も。
そんな空間でいただくのは、市内のコーヒー店で焙煎(ばいせん)したブレンドの豆を使い、エスプレッソマシンで入れたオリジナルコーヒー(600円)など、ドリンク10種。小菓子が付く。グランドピアノやアコーディオンなどの楽器も置かれ、今は珍しい真空管アンプや巨大なスピーカーで、室内の音響も抜群だ。
元手術室は会員制のシアタールームとして活用、知人らから譲り受けた音響機材や約800本のDVDをゆっくり見られる(利用料はワンドリンク付き800円)。2階の14畳の和室も改装、地域の人にイベントや会合に使ってほしいとする。

地域医療の歴史 捨てずに活用を

3代にわたって地域医療を支えてきた青木医院。松本市医師会の会長も務めた青木為三医師が開設した。1934年に改築、木造建築に装飾を施した今の形になった。3代目の医師、安弘さんは産婦人科と皮膚科を診療、次女で、「お堀と青木カフェ」経営者の青木京子さんも病院の運営に携わった。
10年ほど前に安弘さんが亡くなり、京子さんにとっても愛着のある建物の活用法を模索していたところ、「応援してくれる方に出会い、ちょうどタイミングが合って」カフェの営業に乗り出すことになった。
長年使われた医療機器などもそのまま残っており、捨てるのはもったいないと、大工さんと相談しアイデアを凝らした。例えば、カウンターの椅子は、酸素自動蘇生機の鉄枠に診察台の表皮を貼って作ったり、診察用のライトを二つ合わせて照明器具にしたり。
カフェには、近所の人や、外を歩く観光客など幅広い世代が足を運んでいる。「カフェに1人で入ったことなどなかったが、ここは優しい雰囲気で入りやすい。お父さまから受け継いだ医院や用品を壊したり捨てたりせず、大切に生かしているのがすてきですね」と、何度か訪れているという赤羽宣子さん(同市女鳥羽)。
青木さんは「本当にたくさんの方々の協力があって開業できた。今も試行錯誤の連続だが、今後はイベントなども企画していけたら」と話している。
席数15。金~月曜の午後1~7時営業。TEL0263・32・1068