奉仕の心継承するために
大きな岩の上に立つ等身大の半裸婦像。ブロンズ製で、シャツを1枚羽織った女性が腕まくりをし、左手に何かを持って目を閉じ、耳を澄ましているように見える。後ろに回って見上げると、持っているのは大きな貝殻と分かる。
場所は市サッカー場の駐車場の一角。ボールを追う選手らには、少し刺激的ないでたちに思える像は、松本深志ライオンズクラブ(LC)が結成30周年を記念し、1993(平成5)年10月に建立したとある。
「アルプスの山なみを望み、空港、競技場、馬場を一堂に集めた松本平広域公園緑地に、奉仕の心を永遠に継承するためにここに建立した」と銘文にある。像の作者は日展会員の彫刻家・田畑功さん、「さわやか」の題字は元市長の故有賀正さん。
同LCの岩間勝敬会長(65)によると、建立から30年近くたち当時を知る会員も少なくなったが、今も毎年春と秋に像周辺の清掃活動を続けているという。コロナ禍の今年は1回だけ夏に会員が集まり、周辺の植木のせん定やごみ拾いなどをした。「クラブの先輩方が建てた像。思いを受け継ぎ、大切にしたい」と岩間会長。
北アルプスの山々がくっきりと映える冬の青空の下、一陣の風が像の周りを吹き抜けた。「波の音がする─」。貝殻を手にした像から、そんな声が聞こえた気がした。