8000メートル級の峰々挑み20年 写真家石川さんへインタビュー

来年1月~「8848/8611」写真展

8848/8611
前者は世界最高峰、ヒマラヤのエベレストの標高、後者は世界2番目の高さながら最も困難な山と言われているK2の標高だ。ともに取り込める酸素の量は通常の3分の1。酸素ボンベがなければ満足に呼吸もできない。地球上、最も過酷な環境の一つとされる。
写真家の石川直樹さん(44、東京都)は、8000メートル級の峰々に挑み続けて20年以上。古い中判カメラによるフィルム撮影にこだわる。山だけでなく、登山を支えるシェルパ、麓の村の人々と文化など、山と人の関係性もフィルムに収める。
石川さんの体験のエッセンスが凝縮されている写真展「8848/8611」が1月2日から、松本市中央2の信毎メディアガーデン1階で開かれる。石川さんに登山や写真への思いを聞いた。

未知の世界を体で感じたい

─写真家になったきっかけは。
「とにかく旅が好き。未知の世界を自分の目で見て、耳で聞いて、体全体で感じたい。旅を続けていくためにフリーランスの写真家、ジャーナリストになり、体験を発信している」
「小さい頃から旅や冒険の本が好きで憧れていた。自分の体で世界のことを知りたいと思うようになり、高校2年生の時にインド、ネパールを一人旅したのが始まり。小さな山をトレッキングしながらヒマラヤ山脈にいつか登りたいと思った」
「1本のフィルムで10枚しか撮れない中判カメラにこだわるのは、制限がある中で一期一会の出会いを大切にする撮り方が自分に合っているからだ」
─ヒマラヤの魅力は。
「初登頂は2001年、23歳の時に初めてエベレストに登り、ヒマラヤの峰々に触れた。10年後の2回目登頂以来、毎年行っている」
「8000メートル級の山を歩く時は、体の悲鳴と細胞が躍動する喜びが交互にやってくる。生が凝縮されたかけがえのない時間だ。2カ月半ほどの遠征で自分の体がリセットできる感覚がいい」
「山登りと同時に周辺文化が好き。ヒマラヤの麓に住む山岳民族のシェルパは独特の文化があり、山や自然へ畏敬の念を持っている。登山をサポートしてくれる仲間であり友達。会いに行くのも目的だ」

困難な山に挑む周辺文化も魅力

─K2への挑戦は。
「K2はヒマラヤ山脈の西端、カラコルムにある。ルートが難しく、しかも独立峰のため、数ある8000メートル級の峰で最も登頂が困難。15年と19年に遠征し下見を含め計4回訪れた。19年に8100メートルまで登ったが雪の状態が悪く撤収した」
「麓のパキスタンの文化はネパールと全く違い未知の世界に出合っている、というぞくぞくした気持ちが湧き上がってきて面白かった。登山を手伝ってくれた村人も撮影した」
─信州とのつながりは。
「コロナ禍前は1年の3分の2を海外で滞在したが行かれなくなり、今年の冬、実行委員会が公募した『アーティストの冬眠@信州』に参加し、松本市内をはじめ県内5カ所で過ごした」
「松本には20年ほど前から北アルプス登山や仕事で来ていたが長期滞在はこの冬が初めて。縁あって岳都・松本で作品展を開けるようになりうれしい。約100点を展示するので見に来てほしい」

【プロフィル】
【石川直樹】2001年、世界七大陸最高峰登頂を最年少(当時)で達成。世界を旅しながら作品を発表。「CORONA」で土門拳賞、「最後の冒険家」で開高健ノンフィクション賞を受賞。

【インフォメーション】
【8848/8611】1月2日~2月14日、午前11時(土、日曜と祝日は10時)~午後6時。前売りはスマホ電子チケットのみ(700円、ペア1300円)。当日券は一般800円、ペア1500円、高校生以下無料。 石川直樹写真展 8848/8611 信毎まちなか情報局TEL0263・32・1150