わが子との約束…夢のおもちゃ館完成まで半年

夢を現実に「有言実行」間近に

「かあちゃんがおもちゃ館をつくってやるから」。約12年前、母親が当時5歳だった娘と交わした大きな約束が、あと半年ほどで現実のものとなる。
母親は松本市内で人材コンサルティング業を営む赤沼留美子さん(50、井川城)。わが子と約束した「おもちゃ館」は「松本里山ドアーズ」と名付けた。木のおもちゃ館やカフェのほか、宿泊もできる複合施設として同市岡田下岡田の住宅街で建設が進む。
「木のおもちゃは子どもが主体的に動かさないと遊べない。そこから想像力が生まれるのでは」と赤沼さん。母としての思いと、経営者としての社会貢献が両立できる施設にしたいと考えている。
母と娘の夢から生まれる場所に、子どもの声が響くのは間もなくだ。

BBQや宿泊も地域連携も計画

松本市岡田下岡田の高台の住宅街。20年以上も廃虚になっていた建物の跡地で「松本里山ドアーズ」建設が進んでいる。赤沼留美子さんが土地を購入し、建物を解体して更地にした。建物は、本館と浴室棟があり、昨年12月に上棟した。
本館にあるのが、赤沼さんが「この施設のシンボル」という樹齢約500年のケヤキの巨木だ。根元から高さ約4メートルのところで伐採され、太い部分は直径約2メートル。中は朽ちて空洞になっており、窓のように穴を開けて、子どもたちが中に入って遊べるようにする。
1階の木のおもちゃ館には、ドイツやスイスなど欧州製のほか、国内のクラフト作家が製作したおもちゃ約100点を置く予定。同じ階にはカフェとテナントのエステ店も。2階には宿泊用の部屋を2部屋確保。浴室棟にはシャワールームとランドリーなどを完備する計画だ。
敷地内にモンゴル遊牧民の移動式住居「ゲル」を数棟設け、屋外でのバーベキューやたき火など、アウトドア気分も味わえる趣向にする。
施設近くの牧場やリンゴ農園などと連携して一帯を回遊できるようにする構想を描く。地元農産物の直売所も設ける計画で、赤沼さんは「宿泊は首都圏から誘客。他の施設は地元の人にも気軽に立ち寄ってもらえたら」と見込む。

鳥取から松本へ娘の表情に一言

赤沼さんは12年前、夫の転勤で、3人の子どもを連れて鳥取県に移住した。親子ともども見知らぬ土地で、心の安らぎになったのが鳥取市にある童謡・唱歌とおもちゃがテーマのミュージアム「わらべ館」だった。
その2年後、松本市に戻る直前、長女が言った。「松本にわらべ館はないよね」。その寂しげな表情を見た赤沼さん。その時、「かあちゃんがつくってやる」との約束の言葉が飛び出した。松本に戻ってから物件を探しつつ、木のおもちゃの魅力を広げるイベントなどを開催。自身の思いに賛同してくれる人の輪を広げた。
4年前、廃虚になった旧ホテルを再利用する話があり、計画を進めたが、老朽化が激しいことなどから、いったんは白紙に。それでも諦めず、新築する際の図面製作を続け、棟上げまでこぎ着けた。
施設は6月末に完成し、9月ごろオープンの予定。現在、スタッフとして採用された5人のうち3人が現場で細かな準備を進めている。支配人に就く上條正明さん(61)は「地元の人に『いいね』と言ってもらえる施設にし、地域が活性化すれば」と期待する。
「今年、念願がかなうが不安もある。ここから『まだ帰りたくないよ』といった子どもの声が聞こえてきた時が本当の完成です」。赤沼さんにとっての「有言実行」が実現する瞬間は遠くなさそうだ。