箏×ジャズで可能性追求 渡辺邦子さん

ユニット結成し新たな挑戦

凜(りん)とした品のある箏(こと)の調べに合わせ、スイング感あふれるジャズピアノの音色が見事に調和した。
和とジャズを融合させた新感覚の音楽。奏でるのは、箏奏者の渡辺邦子さん(72、松本市里山辺)だ。箏の絃(げん)は13本が一般的だが、渡辺さんは二十絃箏を使って、幅広い音域を響かせる。「古典を大切にしながらもジャンルにとらわれることなく、箏の可能性を追求したい」と話す。
2020年に安曇野市在住のピアニスト、伊佐津さゆりさんと新ユニット「ジャズ・イリゼ」を結成。昨夏にはCDアルバムを発売し全国デビューを果たした。70歳を超えた今も新たな挑戦を続ける渡辺さんは「今が一番楽しい」。15日、松本市音楽文化ホールで新春コンサートを開く。

実家は和楽器店 奏者として活躍

箏曲生田流正派邦楽会の大師範として、これまで多くの後進を育てるなど邦楽界の発展と普及に努めてきた箏奏者の渡辺邦子さん。地元松本市内の小中学校で定期的な邦楽鑑賞会や、コンサートを開くなど20年以上にわたる活動から本年度の市文化芸術功労賞も受賞した。
実家は1880(明治13)年創業の老舗和楽器店「琴光堂」(松本市城東1)。物心つく頃から祖母と母が奏でる箏の音を聞いて育った。
箏は6歳から本格的に習い始めた。母が大師範だったが、「身内が教えると甘えが出る」と、あえて外の教室に通わされたという。稽古はどんな時も決して休むことが許されず、「行くのも嫌で、逃げ出したかった」と当時を振り返る。
転機は17歳。母を病気で亡くした。家業を継ぐことを決心し、上京して箏曲専門機関の音楽院で研さんを積んだ。卒業後は、故郷に戻って地道な演奏活動を続け、94年には県の派遣でリレハンメル冬季五輪の招待演奏をするまでに。

昨夏にCD発売 1月15日にコンサート

ジャズに目覚めたのは2018年。ピアニストの伊佐津さゆりさんが手掛ける「信州ジャズ」のコンサートにゲスト出演したのがきっかけだった。「邦楽にはない、自由な気風とジャズ特有のリズム感が新鮮で心地いい。ジャズってこんなに楽しいものだったんだ」と気づいたという。
伊佐津さんは、19年冬に信州ジャズの活動を一区切りし、渡辺さんとのユニットで新たな一歩を踏み出した。「邦子さんと出会い、自分の音楽性や世界観も広がった」と話す。互いに「好奇心旺盛で、年を感じさせないバイタリティーと飽くなき情熱、音楽と向き合う真摯(しんし)な姿勢は見習うべきものがある」と刺激を受け合っている。
15日に開くコンサートでは、CDにも収録した日本古謡の「さくらさくら」をはじめ、江戸時代から伝わる古典の「六段の調」などをジャズにアレンジして演奏する。ほかに、ミュージカルのウエスト・サイド・ストーリーより「トゥナイト」「マリア」などを、ドラムやサックス、ベースを入れた新春特別バンド編成で届ける予定だ。
「ジャズと和楽器、互いの要素を取り入れながら相乗効果でもっと若い人が邦楽やジャズに目を向けるきっかけになればうれしい」と渡辺さん。「コロナ禍で暗い社会を音楽の力で元気にし、新春らしく華やかなステージにしたい」と張り切っている。

【新春コンサート】15日午後1時半開演。出演はほかに、中島仁さん(ベース)、中野祐次さん(ドラムス)、太田剣さん(サックス)。全席自由。予約3500円、当日4000円。ジャズ・イリゼ事務局TEL090・8871・5419